高校の夏休み。
毎晩悪友とたむろっていた。
その日は、花火をする事にしたが、大人の目に触れる場所は面倒になると、死角になる場所を探し、そして見付けた。
少年自然の家の裏。
後ろは川、横は草むら、その向こうは山。
その間に、運よく泥の空間があった。
ここなら汚しても問題にはなるまい、と始めた。
一段落し、腰をかけた。
辺りは、しーん…と静まり返っている。
一人が突然、
「何か音がしねぇか?」
と言い始めた。
皆、口をつむった。
すると、遠くの方から、微かだが、ザザー…ザザーと聞こえている。
「ラジオの音か」
ほっとしたのもつかの間。
「おかしくねぇか? 何処から聞こえてくるんや?」確かに駐車場もなければ、人すら通らない場所。
深夜零時もとっくに過ぎている。
「草むらの方や、俺、ちょっと見て来る」
と、そいつが音のする方へ歩き出した。
皆も後へ続いた。
背の高い草を、手で掻き分けて行く。
ザーザザー…
音は、どんどん近付いてくる。
そこへ、草むらの中に、青い軽トラックが見えた。
そのラジオは、野球中継みたいだった。
中に人が乗ってるみたいだし、安心して引き返そうとした時。
前を歩いてた奴が、
「あの軽トラ、やけに古くねぇか?」
と言い始めた。
もう、あと、二、三歩近付いてみた。
「!!!!!」
皆、今までに出した事のない奇声をあげ、転びそうになりながら逃げた。
軽トラの運転席に座っていた人は血だらけ。
廃車の軽トラ。
ラジオの中継に向かって、笑いながら、ボソボソ話しているのが見えた。
廃車の軽トラから流れる、深夜の野球中継…
血だらけなのに、六十代後半の男性だと直感した。
死体とかではなく、この世のモノではなかった。
あれから十年経つが、
二度と近付けない場所。
どんなワルでも、
絶対に近付けない場所。