これは私が高校時代に体験した話です。
その頃は今と違い、法律的には16歳で原付免許を取得出来る以外に、自動二輪(中型)を取得する事ができました。
私はノーヘル仲間(原付のヘルメットは義務ではなかった)をよそに自動車学校へ通い自動二輪を取得しました。
そして、貯金の全てを吐き出し、当時750キラーと呼ばれ人気があった某メーカーの350CCのバイクを愛車にして走り回っていました。
ある朝、出掛ける際に仏壇に手を合わせた時です。父の位牌がパタンと倒れました。
「?」
私は「風か何かで倒れたんか?」と位牌を直し、母に「行ってくるわ」と弁当を受け取り家を出ました。
バイクは快調そのもので、いつもの朝、いつもの道路、いつもと同じように感じていたのですが…
ふと耳に入るのはタイヤが鳴いた音…
そして目の前に迫るトラックが白だと分かった途端、私の意識は無くなりました。
サイレンの音と「○○さーん聞こえますか?あぁ、頭打ってます。」と聞こえたのですが、激しい痛みにまた気絶したようです。
病院まではどの位かかったのか、途中不思議な体験をしたのです。
そこは、何もない暗い所で上下左右もわからない 。人の気配も風もなく音も無い。
「どこなんだろ?俺のバイクは?」と思った時です。
「○○、お前の来る所じゃないぞ。帰らないとダメだ」
「叔母ちゃんビックリしてるから帰れ」
と怒鳴られ、そちらの方に目をやると、父らしき(顔を知らない)人と手を繋ぐ姉、そして親戚の兄ちゃん(バイク事故で亡くなった)がボヤッと光っていました。
「いいか?むこうへ向かって走れ!」と言われても暗くてわかりません。
戸惑っていると、
「早くしないと来るぞ」と脅かされ、私は訳もわからず走りました。
どの位走ったのか、遠い所から「○○さん聞こえますか?痛い所分かりますか?レントゲンの準備して」と聞こえ、目を開けました。
蛍光灯が眩しかったのを記憶しています。
すると看護婦さんが「あっ、先生気がつきました」と言っています。
そうです、私は現世に戻ってきました。久しぶりに母の涙を見て、すまない気持ちと一緒に体験した事を話しました。
やはり父と姉、そして親戚の兄ちゃんのようで、「助けてくれたんだろう」という話でした。
でも「早くしないと来るぞ」の意味は未だに分かりません。
生死の境とは、このような体験の事なのでしょうか。