これは友人の藍子(仮名)が体験した話です。
藍子は1人っ子で、もちろん両親がいましたが父親から虐待されていました。
度々青アザを作っていることがありましたが、僕の質問には陸上部の練習で転んでできたものだと、嘘をついていました。
それが中学二年生の時でした。
それから三年生になったある日、顔に明らかに殴られてついた、青アザを作って登校するようになり、さすがに心配になった僕は先生に言い、それがきっかけで保護され、父親からは離れて母親と二人で住むようになりました。
それから間もなく、両親の離婚が成立しアザを作ることもなくなりました。
しかし間もなく、母親が倒れて入院したということを聞きました。後から分かりましたがガンでした。
落ち込んでいる藍子を励まそうと話しかけると母親の事を話し始めました。
それは父親から虐待される時はいつも母親は藍子を必死でかばい藍子以上に暴力を受けていたこと、働かない父親の代わりに朝から晩まで働き藍子を育てていたことを。
泣いている藍子を見て一緒に泣いてあげることしかできませんでした。
それから同じ高校に進学した春、藍子の母親は亡くなりました。
さすがに一週間ほど休み、久しぶりに登校した藍子を励まそうと声をかけた僕に「大丈夫」と強がっている藍子を見て余計に心が痛みました。
そして、ふと藍子の首を見るとペンダントをかけているのに気づいた僕に、母親が亡くなる前日にくれたものだと教えてくれました。
その時母親は『私の一番大切なもの、あなたにあげる。これを私だと思って大事にしなさい』と言っていたそうです。
またこうも言われたそうです。
『ペンダントの中には藍子が幸せになれるように願いを込めてあるから、絶対に開けちゃあ駄目よ、あなたが幸せになれたと思ったら開けなさい』
それから高校三年生になり藍子もすっかり元気になり、帰りに階段を一緒に降りている時に、藍子がつまづき、かばおうとした僕もろとも転げ落ちてしまいました。
幸い二人とも大きな怪我はなかったのですが、藍子が『ペンダントがない』と騒ぎだしたので、探してみると階段の踊場の隅に見つけましたが衝撃でペンダントが割れ、中から白い紙が見えていました。
藍子がすぐに拾いに行きました。
藍子は『割れちゃった、お母さんごめんなさい』と小声で言っていました。
そしてペンダントの中の紙を取り出し、開いてすぐに藍子が肩を震わせていました。
てっきり何らかの母親の藍子へのメッセージを見て泣いているのだと思い、痛い腰を持ち上げて近づくと、泣いているのではなく、真っ青な顔をして怯え震えているではありませんか。
思わず藍子の手からその小さな紙を奪い取り、見た僕は気絶するほどの衝撃を受けました。
そこには確かに母親からのメッセージが手書きで力強い筆跡で書かれいました。
そこにはたった四文字
『藍子死ね』と。
もし藍子がもっと大きくなり、父親の暴力の傷が癒え、幸せな時に開けていたらと思うと、頭の中がぐちゃぐちゃになり吐き気がするほどでした。
これは本当の話です。