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 森佳子記者
 [東京 18日 ロイター] 中国は2010年末までに総額4兆元(約57兆円)を投じる大規模な景気刺激策を発表したが、これによって中国が来年8%以上の成長率を達成したとしても、日本を含めた近隣アジア諸国への波及効果は限定的とみられる。
 中国国務院(内閣に相当)は9日、世界的な信用危機のなか、内需を押し上げ国内経済を支援するため、今後約2年で総額4兆元の財政出動を行うと発表した。
 新華社が報じた政府の声明は「過去2カ月間に世界的な金融危機が深刻化したことを踏まえると、政府は複雑で変化しつつある状況に対応するため、柔軟かつ慎重なマクロ経済政策を取る必要がある」としている。
 この景気刺激策は、中国の年間国内総生産(GDP)の16%に相当するが、専門家や市場は景気刺激策の効果について慎重な見方をしている。
 「仮に全額が真水で新規資金と仮定すると、GDPの押し上げ効果は8%程度となり、成長率は現在の9%から10%台後半に急進することになる。これでは昨年11.9%だった景気を過熱と判断し、金融を引き締めた説明がつかない」と野村証券・金融経済研究所・シニアエコノミストの佐野鉄司氏はいう。
 エコノミストの間では、「刺激策の具体的内容が出てこないので、継続案件の公共事業なども4兆元に含まれ、追加分は限定的」(外銀エコノミスト)との見方が一般的だ。他方、真水部分が全体規模の1%と推計するエコノミストもいる。
 <中国の潜在成長率と近隣国>
 景気刺激策で中国経済が再び2ケタ成長に復帰すれば、近隣のアジア諸国は多大な恩恵を受けるはずだが、景気刺激策を受けた市場の高揚感は長続きしなかった。
 発表の翌日、アジアの主要な株価指数は軒並み上昇し、コマツや日立建機など中国の内需に関連の深い銘柄が急進した。ドル/円相場は、株高・円売りの連鎖で一時99.30円まで上昇した。
 だが、アジアの株式市場は現在再び軟調な展開となっており、上海総合株価指数は18日、前日比6%を越える下落を見せた。ドル/円相場も現在は96円半ばを推移している。
 上海証券報によると、中国人民銀行(中央銀行)の樊綱・金融政策委員は、来年の中国GDP伸び率は約8%との見通しを示した。景気刺激的なマクロ政策が実を結べば、2010年は成長率が8─9%になる、との見方を示した。
 「中国政府が算出した潜在成長率は9―10%であり、来年については一時的に8%台に低下することを許容する姿勢を見せている。大規模な景気刺激策の中味は現時点で不明瞭だが、8%割れを回避すべく、政府があらゆる政策を講じる準備があるという意味だと捉えている」と信金中央金庫総合研究所・上席主任研究員の黒岩達也氏は言う。中国経済が潜在成長率を下回れば、失業者が増加し、社会的混乱を引き起こすからだ、と黒岩氏は述べる。
 中国では、来年の経済運営方針を決める中央経済工作会議が、今月末から12月にかけて開催される見通しだ。財政政策については、これまでの中立から積極財政へと基本方針の転換が図られる可能性が高いという。
 金融政策については、国務院は「穏やかに緩和的な(moderately easy)」金融政策へのシフトを発表。9月中旬以降に3度実施されている利下げに加え、新たに追加利下げが行われる可能性を示唆した。
 温家宝首相は10日に地方政府に対し、産業の重要な柱となる不動産セクターの「適切な指導と監督」を要請したが、この発言を受け、中央経済工作会議で追加対策が発表される可能性があるとの観測が強まっている。
 ただ、中国が8%成長を維持しても、景気の急減速に苦しむ近隣国の救世主にはなりそうもない。 
 「中国がインフラ投資をする際には日本から資本財の調達が必要となるほか、内需関連の日系企業も中国国内での受注増が見込まれるため、限定的な効果はある」と野村証券の佐野氏は言う。
 他方、「中国は内需中心の経済運営が可能であるのに対し、日本を含めて近隣国は輸出立国で最終的な輸出先は欧米市場なので、中国が2ケタ成長を維持しても、欧米市場の落ち込みの影響は回避できない」と信金中金の黒岩氏は言う。
 日本を含め、内需中心の経済システムを構築することが今後アジア諸国の課題となる。
 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)


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