どれくらい話をしただろう…
雲に覆われていたはずの空がうっすらと明るくなっていた。
雲の切れ間から月が顔を見せてくれたから…
〈月…綺麗だな…〉
「うん…」
〈俺、こう見えて昔から本読むの好きでさ。
あ、あれ知ってる?
夏目漱石の月の話。〉
タケルくんと色んな話をした。
お母さんのこと、学校のこと、将来のこと…くだらない話も…
タケルくんがこんなにもお喋りなの知らなかったな…
たぶん話したかったんだと思う。
ずっと言えなかったことを誰かに聞いてもらいたかったんだと…
泣いてしまった私を受け入れてくれたタケルくん。
私なんかよりもずっと…
ずっと大人なんだね…
真夜中、月明かりの下で過ごした二人の時間はとても大切な時間だった。
タケルくんと話せて良かったって心から思う。
〈俺も先生になれっかなぁ…〉
「えっ?」
〈やってみるかな…〉
そんな話初めて聞いた。
なんか嬉しくて…
進学のこと、これから一緒に考えようと約束したんだ。
深夜2時過ぎ…ようやく帰宅する私。
長い一日だったけど…
最初はどうなることかと思ったけど…
今は…少しだけ前に進めた気がする…
あ…
あれ…?
アパートの目の前まで来ると部屋に明かりがついている。
駐車場には見慣れた一台の…
えっ?
急いで階段を駆け上がり、部屋のドアを開けるとそこには…
「潤くん…!」
目の前に大好きな人がいた。
「潤くん…何で…?」
ソファーに横たわる潤くんに抱き着く私。
だって来るのは明日の朝の予定だったから…
『仕事終わって速攻車飛ばして来た…』
だって…
逢いたかった潤くんがいる…
横たわる潤くんの上に重なり抱き着いて…
潤くんが私の腰に腕を回しぎゅーってしてくれる。
私は潤くんの首筋に鼻を擦り付けてくんくんするの。
『こんな遅くまで何してたの?』
「ちょっとね…」
くんくんしながら答える私。
『ちょっと…何?』
「仕事…」
『ふーん…こんな時間まで?』
抱き着く腕を解かれ、上に重なっていた私をぐるりと反転させた潤くんは…
『泣いた…?目赤いよ…?』
私の顔の横に腕をつき組み敷き、上から見下ろす形でそう言うの。
『夜中に帰ってきた理由を説明しろよ…?』
「説明って…仕事だよ…
潤くんには関係ないもん…」
『ふーん…
今日は21時には終わるんじゃなかったっけ?』
「うん…
でもそのあと色々あって…」
『何か他の男の匂いがする…』
「別にしなっ…ン」
私が言い終わる前に唇を塞がれてしまった…
潤くんの舌が私の舌を絡め取る深くて少々荒っぽいキス。
「ン…っ、じゅ…!」
夜中に帰ってきたのには色々あって…
だいたい潤くんが早く来るなんて聞いてなかったし…
相変わらず潤くんはそういうとこすごいヤキモチ妬きだ。
妬いてくれるのは嬉しいんだけどね…
ちゅるっと唇が離されたと思ったらすかさず…
『何があったの?』
「何がって…」
鋭い視線でじっと見つめられる。
潤くん…それは難しい質問だよ…
「前にレストランの前で偶然会った男の子いたでしょ?
あの子、最近お母さん亡くされたり色々あって…
少し話をしてたの。
それだけ…」
『ふ~ん…』
「施設には色んな事情を抱えた子がいるから…
潤くんにそれを全部は説明出来ないよ…」
あ…
自分で言ってから少し後悔した。
もっと上手く説明すれば良かったかなって…
冷たい言い方だったかな…?
「あ…違くて…
個人情報になっちゃうからベラベラ誰かに言うことじゃないから…
ごめんなさい…」
『フフ…まぁ…いいや。
彩が仕事頑張ってるってことで許してやるよ?
でもあんま遅い時間に一人で外歩くなよ?』
「うん…」
その先の二人はまぁ…
みんなの想像通りで…///
(今回はしおりちゃんが書かないって言ってマスw)
離れているのが辛い分、逢えた時の喜びは一入で…
触れられた箇所が熱くて熱くて堪らなくて…
もっと欲しくて…
そんな私を潤くんは優しく包んでくれるの。
私は…
やっぱり潤くんじゃなきゃダメなんだぁ…