分厚く濃い化粧、どキツイ香水、華美な宝石、露出も過ぎればただのケバい服にしかならないって事を気づきもしない女たち。
富と権力、名声を欲しがり言葉巧みに互いの腹を探り合う男たち。
虚栄と欲の塊がゴロゴロ溢れるこの場所では息をするのも嫌になる。
うら暖かい卯月の夕べだというのに…。
ホテル・ラプンツェル東京
それが俺、芹澤 翔琉(せりざわ かいり)の中学からの親友である桐島彰人(きりしま あきと)がオーナーを務める新たなホテル事業の名称。世界の主要都市ほぼ全てに事業を展開する、いわゆるセレブなヤツだが見た目も性格も良い優れた男だ。
顔も良い金もある、となると女はヤツを放っておかない。彰人はまだ31歳だが、いや、「もう」と言った方がいいのか独身だ。彼の女性に対する理想は聞いているとそんな女はいないんじゃないかと言いたくなる程バカに高い。
運命の女を探し続けている、いわば夢見る男だ。
まぁ、俺にしてみれば大事な親友が変な女に捕まって今みたいに気楽に遊べなくなる関係になっては欲しくないから、ヤツの理想の女が現れて欲しいと願う反面、もう少し先でもいいんじゃないかとも思う複雑な心境ってモンなのさ。
おっと、彰人の事ばかりしゃべってしまった。でも今日は彰人のホテルのオープニングセレモニーだから、それも仕方ないか。
美しいピアノの旋律が漂うバンケット内を見渡す。見たことがある顔はそこら中にたくさんいたが自分からは話し掛けたいとは思わない。むしろ、俺に気付いて声をかけられる方が面倒くさい。だから出来るだけ周りの人間と視線を合わせないようにアイツらの姿を探したら、奥のガーデンへ続くフレンチドアの側にいた。