彼女がどこへ行ったのか、私たちは想像もできない。

そんなことをぼんやりと思いながら、lineの中で彼女のアカウントを検索した。

更新のシルシがついてて、あれ?って思って。

開いてみたら、きっと子供たちの仕業で。

彼女のプロフ画像は彼女の三人の希望たちの笑顔だった。

 

唐突な夜の来訪者となった彼女の夫は、彼女の死にまつわるあらゆる噂を一つずつ話してくれたけど。

訃報を受けてからの一つめ。

彼女には多額の借金があり、それはとても返済どころではなく、経済感覚のない彼女が使い込みまでしても埋めることのできないものだったため。

そんなものは鼻っから嘘っぱちだと知っていた。

まだ学生だった頃に実母を亡くした彼女は父と妹の三人暮らしの中で常に長女で、常に母で常に姉だった。

そんな彼女は自身が高校卒業とともに就職し、すぐに夫との間に第一子を授かっても出産ギリギリまで就労し(といっても事務職だったから。)、出産後も夫と二人、育児とともにやりくりしながら妹の専門学校就学費用を負担していた。

そんな彼女が、だからって、今更、借金ごときで人様のお金に手を伸ばした果てに、自らの死を選ぶなんて、私にも夫君にも想像に及ぶことではなかった。

「ありえない」

二つ目。

夫による家庭内暴力、ⅮVが原因だという。酒豪で酒癖悪く、酔うといつも身近な者へ手を挙げる夫が、いつも犠牲にしていたのが妻であり、妻の体には痣がたえず、子供たちが巣立ってしまった今となっては、彼女の砦は一つもなく。そのことを苦に、行き場のない彼女が選んだのが今回の別離の形だった。

いかにも。よくできたストーリーで、サスペンスでも始まりそうである。

そして夫君と大笑いした。酒豪は夫君ではなくて、彼女だったし。夫君は暴力に拳を上げるくらいなら、瀬々らおかしいことでも言って相手をへなちょこにしたいタイプである。

その手はバレーボールしか打たない。

「ありえない」

 

こうして綴っていたら、私のほうが三流推理小説かにでもなった気分。

妻ちゃんもきっと笑ってる。

「あんたそのまま作家になれば?」なんて言いそう。

やだ。

ちょっと笑えて来た。