パラドックス13 感想とか | 部屋の片隅ブログ

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先週、本屋に大量に平積みされている「パラドックス13」という本を購入。
あらすじを読んで、興味を引かれました。
SFっぽかったんですよね。宇宙戦争とか、インセプションとか、日本沈没っぽいかなって。SFものに惹かれがち。
ちなみに東野圭吾さんの作品。久々にメジャーどころの小説買った。
最近は、イニシエーションラブは借りて読みましたけど。
そっちも面白かったから今度感想とか書きたい。

で、今回読んだ「パラドックス13」の感想をツラツラと書き連ねようかと思います。

以下、ネタバレを含むので、ご注意下さい。
しかも長いかも。










まず、設定はSFだったけど、中身は思いっきり人間物語で、実際にあったらどんな風だろうか、と想像してしまうものでした。そして、想像して怖くなってしまいました。
東日本大震災を彷彿とさせる内容で、その描写が当時ニュースでたくさん流れていた映像を思い出させるからです。
小説内では、周りから人が消えるということで大量の人が流されるだとかそういうのではないんですが、だからこそニュースの映像ともシンクロしやすいのかなと思います。ニュースで流れる映像は主に生物は映っていないですし、映っていたとしてもその人は助けられるので。
しかし、どちらにしても自分以外見知った人がいない、という孤独感は同じに表現されていて、そこが色々絡んで、リアルな恐怖を感じたのかなと思います。
しかも、過酷な世界で孤立して、偶然一緒になった人達と生きていく。希望が薄い中必死に生きても世界は残酷で、仲間は死んでしまう。そういうのも、あの災害時の状況と被ったり。
希望と絶望が混ざり合った、人間の感情の起伏が詰め込まれた作品です。
そんな世界の中に、今の(と言っても、掲載は2007年からなので7年前になりますが)社会の問題を織り込んで、人間とか生きていくこととかに対する問い掛けを投げかけられているんだなと感じました。
リアルに考えてもらうための、あの環境だったんだと思えます。似たような設定も他で見かけますが、見せ方が巧みなんでしょうしね。読むのが東日本大震災後ってのもありますけど。
この本があの震災の前だったことに少々ビックリするくらいです。
日本は水害も多いので多少は前例があってそれを参考にしたかもしれないですけれど。東野さんも、執筆後にあのような震災が起こるとは思ってなかったでしょうね…。

で、そんな環境に、宇宙のエネルギーの影響で矛盾が生じてしまった13人が投げ込まれてしまうわけなんですが。最初は驚きと戸惑いがありつつも少しは希望を持ちながら読めますね。人に会える、美味しいものを見つける。これからどう展開していくのか、ページを一気にめくってしまいます。とりあえず、夕樹とか太一達が食べてた寿司、食べたくなった。
どんどん仲間が増え、でも環境は悪化する一方。
モヤモヤし出します。
モヤモヤが続く感じも、まさにその環境にいる人と似ている感じかなと思います。両者には考えられないほどの差はありますけれども。
そんな中、河瀬さん登場。
こういう話に悪人とレッテルを貼られた人は必須ですね。
善悪論がわかりやすいですし。しかも弱った状態というのがいかにも。不謹慎かもしれませんが、こういう状況はハラハラして、物語を読む上では好きなパターンです。実際に遭ったら、と思うとそんなこと言えないんですけれど。
そして河瀬さんみたいな人、何か好きになりがちです。
何というか、ハッキリしてるからでしょうね。
疑心暗鬼になりながら怯えたり「でも…」って卑屈になりがちな中で、俺はこうだ、とドーンと構えている人がいると安心するんですかね。
私の真逆でもあるので、だからってこともありえます。
河瀬さんを発端とする危機を乗り越え、厳密には乗り越えきれてないと思いますが、何とか先に進む一行。ほんと、前進してるわけではなくて進んでる、って感じです。
山西夫妻はしんじゃうし…。春子さんはまだ幸せだったのかな、と読み終えた今では思ったりもします。少し希望がある中で、誰も失わない状態で、愛する人の近くでの死ですから。
山西繁雄さんが亡くなったのは辛かったですね。いい人だった。でもやっぱり仕方ない。
続けざまに心の拠り所にも成り得る、人生の先輩が亡くなるってのはきつい。でもあの世界では弱いものが生き残れないんだな、と。そして今の日本は幸せだけど、矛盾も孕んでいるなと。
それにしても早く希望が欲しい!となる私。
何か美味しいものでもあれば…!と。まるで太一視点。
人間にとって食は大事です。
あと、こういうの読みながら何を希望と捉えるか、というのも自分の真理に関わってくるのかな、と思いつつ読み進めます。
食べ物の問題は出てくるわけで、太一がやっぱりやらかしちゃう。
それはまぁいいとして、その後結構すぐ死んじゃうじゃないですか。
あれは無いよ、ひどいよ、辛い。
折角汚名返上と、頑張って、しかも元気付けながら進んでた太一が。
序盤の癒しの太一が。
長く読んでただけに、もうね。
ここに来て、実は死んだ人は元の世界に戻って幸せなんじゃないのか!と思い始める。
ないよね、と思いながら、最後どう終わるんだろうかと不安が膨れるのが加速します。

やっとP-13の核心に触れますね。やっと。
そんなことどうでもいい感じで読み進めておりましたが。
P-13ってのがなんたるか理解できてスッキリしつつ、そういえば誠哉死んでた。と思い出す私。
過酷な世界に驚きつつ、状況を把握しようとなってしまったあまりにすっかり忘れていました。
気付く人は直ぐに、死んだ人だけいる世界だと気付くんでしょうね。
そんな中、なんだかんだあって二回目のP-13に賭けることに。
結局誠哉死んじゃうし、私誠哉には幸せになってほしかったのに…!!と、心から思いつつもう全員死んじゃうんじゃないかな。もしくは勇人くんだけ生き残って、何かあるんじゃないか、と思ってました。そして誠哉は何を伝えたかったのか…。
結局、13秒の時に死んだ人はそのまま戻ってこれた。
と、思わせといて全然戻れた保証ないっていう。
一ヶ月後どうなるんだよ!
気になってモヤモヤするんですが。
一ヶ月後、過酷な世界の方がこっちの世界になっちゃうんじゃないか、とか。
あっちの世界での記憶がないようなので、その記憶を取り戻して錯乱しちゃうんじゃないのか、とか。あ、でもあっちの世界での記憶はなくても、関係性とかには影響を与えたようでちょっと嬉しかった。でもだからこそ、その関係性の矛盾も一ヶ月後に問題を引き起こしそう。

とりあえず、誰もはっきりとはハッピーエンドじゃない。
ゲームの真エンディングを迎える予定だったのに、ノーマルエンドに辿り着いちゃった気分。
モヤモヤする。
しかも河瀬さんがどうなったか明言してないし。
多分、元の世界には戻れたけど本来の死に方ではないにしても、死んじゃったんでしょうね。
元の世界で夕樹が殺された時も「銃口が火を噴いた」と似た表現だったし。
そう考えると、河瀬またパラドックスに巻き込まれてそう、と不安で仕方ない。
あと、勇人くんの元の世界での無理心中の時期がズレてるのも気になる。
菜々美はどうなったんだろうか。最後が病院だったからそこにいるという暗示かもしれないけど。
50章は色々気になることが多くて、今も色々考えてしまう。
続編、あるんですか?
というか、あの終わり方は、これまでの事件や災害を過去のこととして記憶から消しても、いつか似たことが起きるから慢心せずに対策しろ、という警告でもあるのでしょうか。
何もなかった良かったと安心するものではない、ともいえるし、これはこれからの世界の話だ、と言っているようにもとれる。
一ヶ月後どうなるんだ、と考えるのは本来本の中の事情を知る極少数。のはずなのに、読者も考えてしまっている。つまり、私たちも本の中の世界となんら変わらない、不安のある世界なんだと言っているのかな、なんて考えてしまいます。
とりあえず、色々と考えてしまう終わり方。


分厚くて、読むのに時間掛かるだろうなと思ってたんですが、一気に読めて面白かったです。
ここまで長く書かなくても、ストーリー上問題はなかったと思いますが、この長さだからこそリアルに考えたり共感しやすかったのかもなと思いますね。
これ、映画化は色々と難しいだろうな。
読みながら映像が頭に浮かぶ話ではあるんですが、題材とかで。
しばらくしたら、「映像化は無理だと言われたあの作品が…!」という感じで映像化されてるかもしれません。でもその時は、被災地の復興が完了した後じゃないとダメだと思います。
でもあえて今、被災地で撮影して映像化するという手もあるかもしれない。それが復興につながるようにできるならば。本当にいいものが作れるなら。
見てみたい気持ちと、作らないでほしい気持ちが錯綜しています。


あとは、東野圭吾さんの作品を他にも読んでみたくなりました。
オススメがあれば教えて欲しいです。ジャンルは基本的に何でも好きです。