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☆少子化時代の投資

2023年の合計特殊出生率が1.2となった。現在の人口を維持するには、出生率が2.06~2.07必要とされているので、日本人の減少が加速していることが鮮明になった。

また、1999年以来、24年ぶりに全都道府県で前年を下回った。なかでも東京都は0.99と、2人の男女が持つ平均的な子供の数がとうとう1人を下回った。つまり、それほど遠くない将来に日本人が消滅することが確実視されるようになってきた。

日経新聞によれば、妊娠・出産・子育ての障害となっているのは、1、教育費や住宅費などの経済的な負担、2、仕事との両立の難しさ、3、今から子供を持つほど若くない、4、子育て世代に厳しい目が向けられる雰囲気、5、パートナーに出会えない、などだ。つまり、少子化問題は経済対策で概ね解決できることを示唆している。

実際に低所得者層ほど、収入に不安があるという経済的な理由で結婚していない。

そうした少子化を食い止めるために、政府は「子ども・子育て支援法」を法制化した。その内容を、米CNBCなどは「日本当局、出生率を高めるためにマッチングアプリを推奨」と、揶揄的に取り上げた。
参照:Japanese officials push dating apps in effort to boost birth rates 


ところが、こうした「子ども・子育て支援法」は逆効果となる。つまり、少子化は更に進展する。何故なら、国民の経済的負担を高め、妊娠・出産・子育ての更なる障害となるからだ。「子ども・子育て支援法」の社会保険からの負担額は1兆円、公費(これも国民負担)込みで1.3兆円なので、これらを国民の可処分所得から奪うからだ。

サラリーマンが給与明細を見てがっかりするのは名目に比べた手取り金額の少なさだ。税金と社会保険料が天引きされているからだ。つまり、「子ども・子育て支援法」によって、また手取り額が減ることが決まったのだ。

例えば、4月の平均現金給与額は前年比2.1%増の29万6884円だったが、インフレ率を差し引いた実質賃金は0.7%減だった。3月の2.1%減からはマイナス幅を縮小したが、25カ月連続減だった。そこから税金と社会保険料が天引きされたものが手取り額だが、それが「子ども・子育て支援法」によって減ることになるのだ。

年金、健康保険などの社会保険料負担は継続的に増え続けている。一方で、年金の受取額は減り続け、その反面、医療の自己負担額は増え続けている。つまり、より多く負担していながら、受け取るサービスが低下している。

こうした税金、社会保険料、物価高といった三重苦による可処分所得の急減の中で、経済が良くなるとすれば、海外頼みでしか有り得ない。実際に過去最大を続けている企業収益も、海外収益と円安、インバウンド消費にそのほとんどを負っている。かつては海外を席巻した日本経済は、35年ほど余りの間にすっかりと海外に依存する経済となった。

レゲエの名曲に「400年間」というものがある。400年間の同じ哲学で、ジャマイカはボロボロにされたというような歌だ。私は35年間の(日本のここが悪いという)同じ哲学のもと、伸びない給与額からさらに手取り金額を減らし、残った可処分所得で購入したものに消費税を払うという税制で、日本はボロボロになったと見ている。


この点は繰り返し述べてきたので、ここでは拙著から前書きだけを引用しておく。


・まえがき:税収増が見込めない税制

今月も年金給付だけでは生活できなかった。体調もすぐれないが、医療費負担を考えると二の足を踏んでしまう。退職した時には十分に思えた預貯金も底をついてきた。アルバイトも簡単には見つからない。2020年のコロナ禍が過ぎればもっと良くなると思っていたのが、当てが外れてしまった。これが遅くても10年後には始まる、日本人の大多数の老後見通しだ。

読者の方々は日本政府のコロナ対策が中途半端だとは思われないだろうか? 緊急事態宣言や海外で行われた都市封鎖に対しては様々な意見があるとして、緊急事態宣言で日常生活の継続に急ブレーキをかけたかと思えば、Go To などで急いで加速させ、再度、急ブレーキをかけているからだ。また、通常の日常生活に戻るにはワクチンが必要だと言いながら、日本では自前のワクチンすらない。

こうしたことで、日本政府の危機対応が行き当たりばったりだと非難されるのは当然なのだが、日本政府の置かれた状況を分析すると、無策に見えるのも止むを得ない部分があるとも言えるのだ。それを一言で言うならば、日本政府にはカネがないのだ。それでもどうにかこうにか回っているのは、日本の民間にはまだあるところにはカネがあるからだ。しかし、それもこのままでは時間の問題で枯渇する。何故なら、日本政府は返済の当てのない借金を増やし続けているので、いずれは民間の資金で穴埋めするしかないからだ。

どうしてこうなったのか? それは日本の税収が30年以上も増えてなく、経済規模の事実上のピークも20数年前だからだ。このままでは、年金や医療を含めた日本の社会保障制度は崩壊する。日本人は死ぬまで働き続けることを義務付けられる。

このままではと言ったが、日本がこのままの状態を続ける必要などない。日本の一般国民も政府も、日本にお荷物ではなく、当てにできるパートナーになって貰いたい同盟国も喜ぶ解決策があるのだ。まともに経済成長し、企業が競争力を回復し、国民の所得が上がり、税収が増え、社会保障制度や教育に資金を使える可能性が高い方法があるのだ。

本書は、ここ30年余りの日本が抱えている問題を、政府や国際機関などが提供する図表で分析し、その問題点を取り除くことで、ほとんど全ての当事者がより良くなる方法を提案するものだ。このことは、今の日本のシステムではほとんど誰も幸せになれないことを示唆している。このままで耐え忍び崩壊を待つか、現状を変えて幸せになる道を選ぶか、相場と同じで判断するのはあなた方自身なのだ。


読者の方々は、財務省のホームページに「これからの日本のために財政を考える」と題して、このようなグラフがあるのをご存知だろうか?
図00:日本国財政収支の推移(出所:財務省)

図00(省略)は、1975年度から2020年度までの日本の財政収支の推移だ。黒色の折れ線グラフが歳出の推移。青色の折れ線グラフが税収の推移。両線に挟まれたうす橙色の部分が財政赤字幅の推移。赤色の棒グラフが赤字をファイナンスする国債の新規発行額の推移で、基本的にうす橙色の部分に対応している。

このあんぐりと口を開けた鰐の絵は少なくとも数年前から描かれていて、拡がるばかりで閉じることができない日本の財政赤字を象徴してきた。それが、右端の歳出拡大では上あごが外れた状態となっている。つまり、2020年度の税収が60兆円余りとされているのに対し、歳出は160兆円を超えてきているのだ。よく見れば鰐のつぶらな目には、赤い(血の?)涙が浮かんでいるようにも見える。

この63.5兆円とされる税収はコロナ禍と、その対策で経済活動を止めたために、55.1兆円に大きく下方修正されており、一方の歳出は止めた経済を立ち直らせるための第3次補正予算では175.7兆円に増額された。このことは、2020年度の財政赤字は120兆円を超えることを示している。実際に90.2兆円とされている新規国債発行額は112.6兆円となる見通しだ。これは赤字の穴埋めとされるものなので、何と、税収の2倍を超える赤字幅となるのだ。

図00#:日本国財政収支の推移(出所:財務省の図に書き込みしてリサイズ)
 
このグラフ(省略)の財務省における作成者の意図は知らないが、私の見方と近い人たちのようで、1990年度の税収60.1兆円をわざわざ書き込んでくれている。また、リサイズ前の縦長の図の方が赤字の深刻さが際立って見える。このことが教えてくれるのは、日本の税収は30年間も増えていないということだ。一方で、歳出は概ねこれまで通りに増え続けてきたので赤字幅が拡大、政府の借金が積みあがってきたことが分かる。

私はその理由を、1989年度に導入された消費税に見ている。1989年度からの税制改革が税収減に繋がったことで、累積赤字と公的債務が積み上がり、日本の社会保障制度を危機に陥らせたと見なしている。こうしたグラフは日本の有権者ならすべて目にしたほうがいいと思うのだが、少なくとも消費増税を語る政治家ならば見ているはずだと思いたい。

だから更に消費税を上げるしかないという結論に至るのか、私のように消費税を導入したからこうした結果となったと見るのかを、あなた方読者の方々がご自分で判断するべきだと思うのだ。つまり単年度で110兆円超という、税収の2倍を超える財政赤字が意味するものを日本人のすべてが真剣に考えることなしに、日本の社会保障制度がどうして維持できるだろうか?

私は資金運用者だったという仕事柄、40年にもわたって図表に親しんできた。チャートを読み解くことには一日の長がある。読者の方々が1つ1つの図表を理解することの、お役に立てれば本望だ。


2020年9月16日、日本に新しい首相が誕生した。菅義偉第26代自民党総裁が第99代内閣総理大臣となった。自民党の総裁選中、菅氏は「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民にお願いして消費税は引上げざるを得ない」と話していた。少子高齢化を踏まえ、社会保障の財源には必要だと訴えたという。

消費税率引上げが必要だというのは、総裁選に出馬した他の2候補も同様で、日本の首相には誰がなっても、消費増税が既定路線だったことになる。実際、前任者の安倍晋三前首相は在任中に二度も消費税率を引上げた。

とはいえ前図00(省略)でも明らかなように、消費税を導入した翌年が税収のピークとなり、後述するが税率を5%に引上げた1997年度が経済規模のピークとなった。こうして経済が低迷し、税収が減ったことが、社会保障制度がぐらついている主因だと言える。最終章の「崩壊前夜の社会保障制度」を読んで頂ければ分かるが、ほとんどの国民を支えている日本の社会保障制度はこのままでは維持できる見通しが立たないのだ。

消費税のどこが悪いか? 政府財政は国民の税金で運営されている。政府はインフラを整備し、安全に事業が行える環境を整えて、国民が生産によって作り出した富の分け前を税金として徴収する。この時、生産の成果に応じて徴収するのが所得税や法人税だ。消費税はどうかというと、秋の実りを待つことができずに、種や苗の段階で10%を徴収するようなものなのだ。これでは、実りのもとを取り上げられたことで生産が低迷し、かえって税収が減少する。

税制は国の土台だ。土台が腐っているのに、行政改革で雨漏りや風除けだけを修理しても無駄になるのだ。そこで多くの図表をつかって、グラフを見るだけでも理解がすすむように心掛けた。より多くの人々が消費税を理解しないと、日本は良くならないからだ。


前首相の安倍氏は連続在任2822日、第一期と合わせれば在任通算3188日と、共に歴代最長の記録を塗り替えた。このことは、過去2、30年の日本経済がパッとしないとすれば、歴代最大の責任があることを意味する。とはいえ、アベノミクス下の景気回復期間は71カ月と、戦後最長とされた「いざなみ景気(2002年2月~2008年2月)」の73カ月にあと2か月に迫る長さだった。

もっとも、いざなみ景気もアベノミクスも、共に落ち込んだところからゆっくりと時間をかけて回復しただけで、後世に誇れるものを残したわけではない。それどころか、今後の日本にいくつもの大きな課題を残すことになった。

菅首相は、そうした歴史に残る前首相の課題を引き継ぐことになった。どんな課題か、思いつくままに列挙してみる。

1、膨大な累積財政赤字
2、膨大な公的債務残高
3、税収増が見込めない税制
4、このままでは事実上崩壊する社会保障制度
5、少子高齢化対策
6、ほぼ限界にまで緩和した状態の金融政策(残された政策は中立か引締め)
7、消滅した短期金利商品
8、機能を失った国債市場
9、30数兆円の日銀の株式保有残高
10、空洞化、インバウンド頼み、消費増税、コロナ対策でダメ押しした景気悪化
11、大廃業時代
12、貧富格差の拡大
13、米中本格対立を見据えた外交
14、ウィズ・コロナと今後の疫病対策
15、猛威を振るい始めた温暖化への対策


1つ1つが語りだしたら止まらないような大問題ばかりだ。こうした課題に向き合ってきた安倍氏が連続在任記録を更新したその日に辞任を考えた気持ちが理解できるような気がする。同氏自身が2822日かけて、第一期と合わせれば3188日もかけて悪化させてしまった問題を、短い残りの任期でどうやれば好転できたというのだろう。その意味では、日本の首相職は官房長官として前政権を支えてきた菅氏が引き継ぐべき「要職」であったと言える。

本書の主題は、社会保障費の財源とされる消費増税が、増税による景気の悪化を通じて、社会保障費をかえって増やしてきたこと。一方で、財源となる総税収を減らしてきたこと。これが財政の巨大な累積赤字や、膨大な公的債務の主因になり、社会保障制度の維持を脅かしていると指摘することだ。

さらには景気の悪化を通じて企業の競争力を低下させ、労働環境を悪化させ、貧富格差の拡大につながったとも見ている。

またそうして悪化した景気を刺激するため、副作用の弊害が甚大なマイナス金利政策や、将来的な国の信用を失墜させる通貨の乱発、財政ファイナンス、中央銀行による民間企業の株式保有などにつながり、日本の金融政策が機能を失ったことも指摘している。

私自身がこれらの図表を分析して得た結論は、税制1つで国が栄えも滅びもするということだ。日本は1989年度から「税収増が見込めない税制」に変えた。これが上記に挙げた15の課題の大半を作ってきたことを、図表データをもとに解説する。

このことは税制さえ高度成長期、バブル期のようなものに戻せば、まともに経済成長する日本に戻すことができることを強く示唆している。具体的には消費税の撤廃と、所得税の累進課税率の拡大、法人税率の引上げだ。こうして、税収が増える税制に戻すことなしには、日本の社会保障制度は崩壊してしまうのだ。

社会保障制度の維持は他人事ではない。誰もが将来は年金の受給者となる。健康保険は今でも使っている。誰も失業保険の世話にならないとは断言できない。仮にそうした給付の対象となることがなくても、現時点で誰もが社会保険料を支払っており、今のままでは保険料の値上がりは避けられないのだ。政府の大借金を民間が穴埋めさせられる日が迫っている。

本書が、あなた方読者の方々の日本の制度を理解する手助けとなれることを願っている。

参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方

著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問


「消費税のどこが悪いか? 政府財政は国民の税金で運営されている。政府はインフラを整備し、安全に事業が行える環境を整えて、国民が生産によって作り出した富の分け前を税金として徴収する。この時、生産の成果に応じて徴収するのが所得税や法人税だ。消費税はどうかというと、秋の実りを待つことができずに、種や苗の段階で10%を徴収するようなものなのだ。これでは、実りのもとを取り上げられたことで生産が低迷し、かえって税収が減少する。」の部分だけ補足しておく。

例えば、デンマークは消費税率こそ日本より高いが、所得税や法人税で税収の60%を賄い、社会保険料はゼロで、高成長、高福祉を実現している。一方で、日本は所得税と法人税とを合わせて半分以下の29%に過ぎない。

日本ではスタート時点の税負担、社会保険料負担が重すぎて成長投資ができず、それが低成長を伴って更なる負担増となる悪循環に至っている。また、それが少子化を加速させ、少子化対策費用という新たな負担を強いている。2004年度からの予算総額は66兆円を超えているのだ。


加速する少子化が示唆しているのは、株価の右肩上がりは望めないということだ。それを見越してかどうか、金融庁は金融機関に政策投資株の売却を指導している。購入時ベースで37.1兆円のETFを購入し、膨大な含み益を抱えている日銀も売却時期を検討している。

新NISAが導入されたが、私は株式保有に対する興味を失っている。短期トレードで積み上げていくのが、少子化時代の投資では最も有効だと見なしている。

 

 


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