・中東情勢と世界の混乱
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☆中東情勢と世界の混乱
2023年10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスが突如、イスラエルへの大規模攻撃を開始、イスラエルに歴史的な被害をもたらした。
現地では何が起きたのか? 鉄のドームと呼ばれていたイスラエルの鉄壁な防衛システムが如何にして破られたのか、目にしたいくつかの記事の中から、事態を理解するのに最も役立ったニューヨーク・タイムズの記事を、紹介した東洋経済オンラインから引用する。
(以下に全文引用、URLまで)
ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」
中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?
The New York Times
10月7日の夜明けにイスラエルへの奇襲攻撃が行われる前、イスラエル情報部は、監視しているパレスチナ自治区の武装勢力のネットワークの一部で活動が急増しているのを察知していた。イスラエルの治安当局の高官2人によれば、異変を察知した彼らは、ガザ地区国境を警備するイスラエル軍兵士に警告を送った。
ところが、兵士がそれを受け取らなかったか、兵士がそれを読まなかったために、警告は実行されなかった。
遠隔操作を「阻止」
その直後、ガザ地区を支配するイスラム勢力の1つ、ハマスが無人偵察機を送り込み、イスラエル軍の携帯通信局と国境沿いの監視塔のいくつかを機能停止させ、当直将校がビデオカメラで遠隔監視するのを妨げた。ドローンはまた、イスラエルが国境の要塞に設置した遠隔操作の機関銃を破壊し、地上攻撃に対抗する重要な手段を取り除いた。
そのため、ハマスの戦闘員が国境フェンスに近づき、その一部を爆破したり、数カ所で驚くほど簡単にブルドーザーで破壊したりすることが容易になり、何千人ものパレスチナ人がその隙間を通り抜けることができるようになった。
センシティブな案件であり、現段階での評価しかできないとの理由で匿名を条件に取材に応じたイスラエル安全保障当局の4人の高官によれば、当局による後方支援や情報面でのさまざまな不手際は、ガザからイスラエル南部への侵入を容易にした。
イスラエルの20以上の町と軍基地への大胆な侵入は、過去50年間で最悪のイスラエル防衛網の破壊であり、国民の安全意識を打ち砕いた。何時間にもわたって、中東最強の軍隊は、自軍よりはるかに戦力的に劣る敵を反撃する力を失い、下着姿の兵士を含む900人以上のイスラエル人を殺害し、少なくとも150人を拉致、4つの軍事キャンプを制圧し、イスラエル領土の30平方マイル以上にわたって拡散した攻撃者集団に対してほとんど無防備のままだった。
安全保障上4つの致命的失敗
この4人の当局者は、初期の評価に基づくと、ハマスによる攻撃の成功は、イスラエルの情報機関や軍による以下のような安全保障上の失敗に根ざしているとしている。
・パレスチナの攻撃者が使用する主要な通信チャネルを監視する情報将校の怠慢
・国境監視装置に過度に依存し、攻撃者が簡単にシャットダウンできたため、攻撃者が軍事基地を襲撃し、兵士を寝床で殺害することができた
・侵攻の初期段階で制圧された単一の国境基地に司令官を集中させ、他の軍隊との連絡を妨げたこと
・そして、パレスチナ人がイスラエルに監視されていることを知りながら民間チャネルで行った、ガザ地区の軍事指導者たちによる「戦闘の準備はしていない」という主張を額面通りに受け入れる姿勢
「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」。
最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。
ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた。
ハマス側の「演出」にだまされた?
イスラエルの国家安全保障顧問であるツァチ・ハネグビは、襲撃の6日前にラジオのインタビューで、「ハマスがこれ以上反抗することの意味を理解している」と語った。
イスラエル情報当局が先週、国の防衛に対する最も差し迫った脅威について上級安全保障責任者に説明した際、彼らはイスラエル北部の国境沿いのレバノン過激派がもたらす危険に焦点を当てた。ハマスによる活動についてはほとんど触れられなかった。情報筋によると、イスラエル当局は、ハマス自体が抑止力になっていると伝えたという。
イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという。
次の失敗は作戦上のものだった。
2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。
イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた。
長年、イスラエル南部の地上部隊を指揮し、2003年から2005年までイスラエル国防軍の作戦部長を務め、最近、戦争のために再び予備役として採用されたイスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。
「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」とジブは話す。
遠隔操作システムの「脆弱性」
しかし、遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばしたと、関係者や、7日にハマスによって利用され、ニューヨーク・タイムズによって分析されたドローンの映像は示している。
携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。
そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した。
イスラエル政府関係者の1人が公開した写真によれば、多数のイスラエル軍兵士が宿舎で寝ているところを銃撃された。中には下着姿の兵士もいた。
第2の作戦上の失敗は、陸軍ガザ師団の指導者たちが国境沿いの1カ所に集まっていたことだ。イスラエル政府関係者2人によれば、基地が制圧されると、幹部のほとんどが殺されるか、負傷するか、人質に取られた。
この状況は、無人機による空爆によって引き起こされたコミュニケーションの問題と相まって、協調的な対応を妨げていた。このため、イスラエルのほかの地域から反撃に駆けつけた司令官を含め、国境沿いの誰もが攻撃の全容を把握することができなかった。
反撃の指揮を執ったイスラエル軍司令官のダン・ゴールドファス准将は、「さまざまなテロ攻撃の全体像を把握するのは非常に困難だった」と語る。
ある地点で、同氏は偶然、別隊の司令官と出会った。その場で2人は、それぞれの部隊が奪還を試みる村をその場その場で決めた。「自分たちだけで決めた」とゴールドファスは語る。「そうやって村から村へと移動していった」。
数分で着くところに数時間かかった
こうしたことから、特に初期の段階では、テルアビブの軍最高司令部に事態の深刻さを伝えるのは困難だった。
その結果、多くのコミュニティで攻撃の報告がソーシャルメディアに上がっても、大規模で迅速な航空援護が直ちに必要だとは誰も感じなかった。イスラエル政府関係者と奇襲の生存者の2人によれば、空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。
この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。
7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。
イスラエル安全保障局は、最初の失敗の規模に異論はない。しかし、戦争が終わってからしか本格的な調査はできないとしている。
「まずはこれを終わらせる」と、軍のスポークスパーソンであるリチャード・ヘクト中佐は、軍がこの地域における支配権を取り戻そうとする準備をする中でこう語った。また、失敗についても「調査されるはずだ」と語っている。
(執筆:テルアビブ=Ronen Bergman記者、エルサレム=Patrick Kingsley記者)
(C)2023 The New York Times
参照:ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」
こうした事態は、日本政府が表明したように「ハマスによるテロ行為」のように思える。しかし、イスラム系とされる勢力から前代未聞の「911同時テロ」を受けた米国で起きたのは、主に反イスラエルの抗議行動だった。有名大学のいくつかでは学生の署名入りの抗議文が出回ったことで、いくつかの企業が署名者の採用は見送るとの声明まで出した。
反イスラエルの抗議行動の方が多いのは、ガザは「天井のない監獄」とも呼ばれ、長さ50キロメートル、海からの幅が5~8キロメートルほどの地域に200万人が閉じ込められた状態にいるからだ。こうしたイスラエルの封鎖政策は、 国際法で禁じられている「集団懲罰」であると国連や人権団体などから強い批判を受けている。
参照:「ガザ地区」を知ろう
実際に、ハマスの攻撃を受けたイスラエルの最初の報復は、200万人に対する電気、ガス、水道の遮断だった。また、過去最高30万人の予備役を召集、報復攻撃を始めるので、100万人を超える北部地方の住人に退去命令を出した。とはいえ、監視下にある狭い地域で多くの人々には逃げる場所もなく、この地で死ぬと決める住人も多いと言う。
ハマスの攻撃前まで、米政府の関係者たちがこのところの中東情勢は安定していると表明していたにも関わらず、中東は変化してきていた。特に今年に入ってからは大きな変化が見られていた。
サウジアラビアとイランの国交回復、シリアのアラブ連盟再加盟などだ。これは米国の対イラン制裁、対シリア制裁が形骸化したことを意味した。また、アラブの春がクーデターで潰されて以降、米国が最も多くの軍事援助を行っていた国の1つエジプトが、米国が要請するウクライナ支援を拒絶した(米国はエジプト支援停止で報復)。
そのエジプト、イラン、サウジが、UAE、エチオピア、アルゼンチンと共に、中国、ロシア、インドなどが主導するBRICSに参加した。エジプト、イラン、サウジは中東の3大大国だ。これは中東諸国が米国の制裁外交を否定したことを意味した。
米国は中東で薄れつつある存在感を回復しようと、サウジとイスラエル間の国交正常化交渉を仲立ちしていたが、イスラエルとハマスの衝突で協議の継続がなくなった。これはハマスの意図の1つだったとも見なされている。
イスラエルは国内でも大きな問題を抱えていた。例えば、7月にはムーディーズが、イスラエルの司法制度の物議を醸している全面的な見直しは同国を更なる混乱に陥れ、同国の経済と安全保障に打撃を与えると警告、「この問題をめぐる政治的及び社会的な緊張が継続し、イスラエルの経済と安全保障の状況に否定的な結果をもたらす重大なリスクがある」と述べた。
イスラエル議会は司法制度を見直す法案を通し、最高裁判所の政府の決定を阻止する権限をはく奪した。これで、パレスチナに厳しい極右の現政権に対する歯止めが法的になくなった。その法案通過を受け、医者を含む多くの国民がストライキを決行した。テルアビブ35株式指数と通貨は急落した。イスラエルは先週、最大300億ドルの外貨を市場で売却すると発表、過去に前例のない為替市場介入を宣言した。戦費調達の意味もあるだろう。
つまり、米政府の関係者たちが表明していたような中東情勢の安定は、イスラエルの内外から大きく揺らいでいたのだ。
一方で、米国の債務上限問題による政府閉鎖、格下げのリスクも、イスラエルにも波及する。S&Pやムーディーズは、米政府債務の格下げは、住宅ローン市場を支える組織から、政府資金に頼っている病院、政府契約業者、鉄道会社、電力会社、国防企業に至るまで、多数の関連発行体も格下げされる可能性に言及している。格下げ対象には、イスラエルのようにアメリカが債務を保証している外国政府も含まれるとされる。これは私も初めて知ったが、イスラエルは米国の国内機関並みの扱いを受けてきているのだ。
このことは米政府のイスラエルに対する支持が揺るぎないものであることを示すと同時に、国内で湧き上がった反イスラエル抗議行動が、反政府抗議に繋がる可能性も示唆している。11月半ばまで伸ばしている債務上限問題に、ウクライナ支援に加えて、扱い方の難しいイスラエル本格支援が加わったのだ。これは大統領選挙を前に、また1つ不安定要因が加わったことになる。
同胞国と戦争をしているロシア、不動産を梃子としたレバレッジ経済のつけ払いを迫られている中国、激動する中東情勢、クーデター頻発のアフリカ諸国、政治的に激変している中南米諸国、インフレと不況に喘ぐ欧州、ここ数年で過去の外交資産の多くを食いつぶした米国。そんな中で、貧困化が加速しながらも平穏でいる日本。どこに何があってもおかしくない世界になってきた。
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