・昭和の税制に戻すって? | 矢口新の生き残りのディーリング

・昭和の税制に戻すって?

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☆昭和の税制に戻すって?

少し前になるが、以下のようなメールを受け取った。どうお答えしていいか分からないので、時間がかかってしまったが、思いつくままにお答えしたい。


(メールを以下にそのまま引用)

矢口様

いつも有り難うございます。
これまで拝読させて頂きましたメルマガ等に記載されている内容から、質問させて頂きます。

<先日発行されたメルマガから引用:>
2011年度から2020年度までの平均税収は年53.4兆円なのに対し、平均歳出は年107兆円

(中略)

そこで私は、日本経済が復活するには、1988年以前の税制に戻すしかないとして、2021年春に一種の啓蒙書を出版しました。

<ここまで>

私は時々冗談半分で、「私達の生活は昭和に戻れば良いのでは?」と呑みの場で言ったりしています。実際には昭和の時代は公害問題、人権侵害等多くの課題を抱えていました。それは、現在の気候変動による地球温暖化・SDGsに引き継がれているのかもしれません。

矢口様の1988年以前とは、まさに昭和の時代ですが、税制を戻す以外に私達の生活の変化が今ひとつ明確に見えてきません。

是非ともその様な目線からのメルマガ発行を検討頂きます様よろしくお願い申し上げます。

(引用ここまで)


昭和といっても、私は昭和29年生まれなので、いわゆる終戦後10数年以降から復興期までの記憶しかありません。

身近な例では、家の前の道が、雨が降れば水たまりのできる土の道から砂利道になり、それがアスファルトの道になりました。

田んぼや畑、沼地などがどんどん埋め立てられ、住宅地や商業地に変わって行きました。それにつれて、遊び場や遊ぶ内容が変化して行きました。

道路が良くなると、自動車の数が急激に増えてきました。家庭内の家電もどんどん増え、その機能も飛躍的に良くなっていきました。

ご指摘のように昭和時代は多くの問題を抱えていましたが、一方で、未来を信じている時代でもありました。

それは、経済が成長していたこと、国民の所得が増えていたこと。また、その増え方が、今よりもずっと国民全体に行き渡っていたことが大きいと見ています。

拙著から、該当の項目を引用します。


(引用ここから、URLまで)

27.One For All, All For Oneの虚実

図27:所得税と個人住民税の累進性の推移(出所:財務省)
  

図27は所得税と個人住民税の1986年(昭和61年)から2015年(平成27年)までの推移を、上から所得税と個人住民税を合わせたもの、所得税だけ、個人住民税だけの順に表示したものだ。

法人税は法人税率を下げつづけたために、もはや大きな増収が期待できない財源となったことは前述した。一方、消費税は安定財源なので、景気後退時には容赦なく取りたてるが、景気拡大期でも大きな伸びは期待できない。では、所得税はどうなのか、前図01、02の左端に見えた税収が増えていた当時の税率を図27で見てみる。

図27の左手に見られる1986年頃の所得税は15段階の累進課税となっている。そして、個人住民税も14段階の累進課税なので、個人住民税と合わせた最高税率はなんと88%の高率だ。つまり、日本が輝いていたころの所得税は取れるところからは思いきり取っていたことが分かる。また消費税はなかったので、取れないところからは無理をしなかったのだ。それでも経済は拡大し、企業は強く、個人所得も増えて、なおかつ財政収支はほぼ均衡していた。一方、右端が現状のもので、前述のように最高税率は55%であることが分かる。

では、所得税が88%の高率で当時の高額所得者たちは不幸せだったのだろうか? たとえば、課税年収が1億円だと、1,200万円が手元に残る。2億円で2,400万円だ。10億円になると1億2,000万円が残る。これではやりがいが削がれるだろうか?

当時の日本人はやりがいを削がれることなく高度経済成長を成し遂げ、バブルにまで至った。多くの人々が浮かれて遊びほうけるようなこともあった。経営者は自分の報酬を増やしても9割近くを税金に取られるので、設備投資をおこない、人件費を上げ、「One For All, All For One」ではないが、会社全体が一丸となったチームとして事業に向かうことができたのだ。前述の図09で示した失業率も2%前後と低く、前図10に見る雇用形態の推移では、従業員の8割以上が正規雇用で安定していた。チームに奉仕するマインドを育成するには、より平等な環境づくりが肝要なのだ。

1989年以前の日本企業が強かったのは、労使間係がより平等だったからだ。そして、所得税の累進課税がそれを促していた。現状のように非正規雇用の割合が高く、経営者が従業員平均の何倍、何十倍、米国式では何百倍もの報酬を持っていく環境では「One For All, All For One」は経営者に都合のいい掛け声にしか聞こえない。

東洋経済の調べでは、2019年度の武田薬品工業の役員平均報酬は従業員平均年収の55倍強で、日本一の倍率だったという。一方で、同社は同じ年に大量の人員整理をおこなっている。また、米労働総同盟産別会議によれば、米主要企業500社のCEOが2018年に受け取った平均報酬は、一般従業員の287倍だったという。

・参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)
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そうした経済成長は一方で、化石燃料の巨大消費などを通じて地球を汚し、温暖化問題を後戻りの出来ないところまで推し進めてしまいました。世界は豊かになったことの見返りに、そうした負の側面に苦しんでいます。

一方、日本は1997年度からは豊かにもならずに、負の側面のシェアだけを引き受けています。日銀の資金供給量はその頃から10数倍と、GDPを2割以上も超え、預貯金や株価にも相応に反映されましたが、賃金が減少し、非正規雇用が増えたことを鑑みれば、貧富の差が拡大しただけだとも言えます。

また、このままではそうした蓄えさえ枯渇し、負の側面に対処する資金が不足するのも時間の問題なのです。

税制を昭和のものに戻しても、生活まで昭和に戻ることはあり得ません。また、地球温暖化が原因ともされる自然災害や疫病と、真正面から向き合う生活に適合していく必要があるかも知れません。

そんな中で、日本が本当の意味で豊かになるには、温暖化対策と経済成長を両立させるしかないと見ています。私は、それは技術的には可能で、それほど難しいことでもないと考えています。どちらを向くかだけなのではないかと思います。

化石燃料から再生可能エネルギーへのゼロカーボンは、エネルギー革命です。再生可能エネルギーに対する否定的、あるいは懐疑的な見方もありますが、化石燃料をほぼ100%輸入に頼っている日本にとっては、チャンスだと見なすべきかと思います。

そのためには、事業や消費活動へのいわば入場料である消費税を撤廃し、より平等な環境で大きな結果を出したものだけに課税する所得税や法人税の累進課税を進めるべきだと考えています。

社会から得た利益を、社会に還元するのでは、事業を行う意欲が起きないという「金目当てだけ」の事業家は、もはや社会の害悪ではないかと思います。

そうした事業家たちを優遇した1989年度以降の税制では、経済も大きくならず、税収も増えず、一般国民が貧しくなったのです。つまり、一部の人たちが豊かになったのと引き換えに、社会全体が貧しくなったのです。

 


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・Quiz Book:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?: 57 questions to reveal the problems of the Japanese economy (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)




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