・政府の財政収支黒字化見通し、27年度から26年度に前倒し
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☆政府の財政収支黒字化見通し、27年度から26年度に前倒し
日本政府はプライマリーバランス黒字化の見通しを、2027年度から1年前倒しし、26年度とした。以下の記事にその理由が述べられている。
(日経新聞から全文引用、URLまで)
内閣府は14日の経済財政諮問会議に中長期の財政試算を提出した。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が黒字化する時期を2026年度とする見通しを示した。企業業績の回復に伴う税収の増加を反映し、前回21年7月の試算から1年前倒しした。
PBは公共事業費や社会保障費といった政策経費を借金に頼らず、税収などの財源でどの程度まかなえるかを示す指標だ。新型コロナウイルスの感染拡大に対応して大型の補正予算を組んだ影響で国の財政支出は20年以降大幅に膨らんだ。PBは21年度が42.7兆円、22年度は35兆円の赤字になる。
その後は新型コロナの感染拡大が落ち着くとともに、経済対策の効果で景気が回復し、法人税収などが増えるとみる。新たな試算は名目3%、実質2%の高い経済成長率が続く前提で、26年度に0.2兆円の黒字になると見込む。
政府は25年度のPB黒字化を財政健全化の目標に掲げてきた。試算では25年度のPBは1.7兆円の赤字が残る。内閣府は社会保障費の抑制といった従来の歳出削減を続ければ、25年度の黒字化も視野に入ると説明した。
岸田文雄首相は諮問会議で「PBは25年度に黒字化する姿が示された。現時点で財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にはない」と述べた。「新型コロナの危機を乗り越え、経済をしっかり立て直し、財政健全化に向けて取り組む」と強調した。
参照:財政収支26年度黒字化 政府、諮問会議に試算提出
日本政府がこのようにプライマリーバランスの黒字化見通しを数年先に置くのは恒例で、目標実現が絶望的になるにつれて、更に数年先に先延ばしすることを繰り返してきた。
その結果、財務省のホームページのグラフにある赤線の一般会計歳出と、青線の一般会計税収に挟まれた赤字幅は一向に縮まらずにきた。
参照:一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移
その結果として累積赤字が膨らみ、赤字をファイナンスする公的債務がGDP比で260%を超えるようにもなった。
今回の見通しでも、「経済対策の効果で景気が回復し、法人税収などが増える」とみるところが、2つの点から心許ないのだ。
1つ目は、日本経済は1997年度から基本的に成長していないところに、コロナ対策で悪化したことだ。大型の経済対策は生産消費活動を制限した損失補填的な要素が大きく、どこまで成長軌道に乗せられるかの具体的な対策は見られていない。
また、ここ10年以上の財政の赤字幅は毎年概ね40兆円で推移している。プライマリーバランスの黒字化には税収増が必要不可欠だと言えるが、これを法人税収だけで埋めるとすれば、法人税収が5倍近くに増えることが必要だ。とはいえ、景気が回復しても法人税収が増えるとは限らないのだ。これが2つ目だ。
この点に関しては、拙著の該当の項目から引用する。
(以下に引用、URLまで)
・21.消費税導入は法人税率引き下げとセット
図22:企業利益、法人税率、法人税収(出所:財務省の資料に書き込み)
図22は1989年度(平成元年度)から2013年度(平成25年度)までの税引前当期純利益(大きく振れている折れ線グラフ)の推移と、法人税率(階段状の折れ線グラフ)の推移、法人税収(棒グラフ)の推移に、書き込みを入れたものだ。法人税とは法人に掛けられる所得税だ。
読者の方々は、本書を読む前から、1989年度の消費税導入は法人税の減税とセットになっていたことをご存知だっただろうか? それが前述のように、2018年度の企業売上、企業利益が過去最大だったにもかかわらず、法人税収は1989年度の65%でしかなかった大きな理由だ。
ちなみに、「法人」とは法律上、人間と同じように人格(法人格)を認められるもののことだ。法人は16世紀の英国で発明され、これによって事業における債務が個人から切り離されることになった。これが後に株式会社として大航海時代のファイナンスを担うことになる。法人の代表例としては、一般企業や私立学校、年金機構、労働組合などがある。
国税庁のホームページによれば、現在の普通法人(商法上の株式会社、合名会社、合資会社、特例有限会社、医療法人、相互会社、企業組合と、一般社団法人および一般財団法人)の法人税率は23.2%となっている。これは2018年度も同じで、同年度の法人税収は12.3兆円だった。
法人税率は法人税収が19兆円とピークだった1989年度には40%だった。仮に2018年度が同じ税率40%だったとすれば法人税収は21.2兆円と、売上や利益とともに過去最大を更新できていたことになる。
前述したように、消費税導入の翌年の1990年度から1997年度まで経済成長は減速する。そして、消費税率を5%に引き上げた1997年度からはマイナス成長となる。
図22の企業利益は左手の1989年(平成元年)度の38.9兆円から、1993年(平成5年)度の18.3兆円へと急減する。税率も40%から37.5%に引き下げられているため、税収は19.0兆円から12.1兆円へと減少する。これは景気減速にともなう収益悪化が税収減につながり自然な動きだと言える。
ところが、2001年(平成13年)度から06年(18年)度までは、企業利益が7.1兆円から49.0兆円へと6.9倍に増えるが、法人税収は10.3兆円から14.9兆円へと45%の伸びでしかない。また、2008年(平成20年)度から11年(23年)度までに至っては、企業利益は22.1兆円から36.4兆円へと急増するが、法人税収は逆に減少した。
この2011年度時点の法人税率は30%だが、今はさらに下がって23.2%だ。この税率では今後企業利益が増えても、税収の伸びはきわめて限られていて、1989年度に達成した法人税収のピーク19兆円は遠のくばかりだ。
人が生きている、国が生きている限り、歳出を減らすのは難しい。歳出を減らさずに赤字を出さないようにするには、税収を増やすしかない。我々、一般国民の生活と同じだ。収入がなければ生きていけないのだ。税収増が必要だと理解して、国民は消費税の導入を受け入れた。
ところが、消費税を導入したとたんに国の税収が減りはじめたのだ。原因の1つは、消費税が景気減速につながったため。もう1つの原因は、消費税以外を減税したからだ。これは、ちょっとした騙し討ちではないか? 消費税は弱者に厳しく、強者に優しい税金だ。法人税率や所得税率の引き下げも強者に優しい。つまり、当時の日本政府は典型的な弱肉強食の税制を敷いた。そして、そのトレンドは今も続いている。
ところが、その税制改革は日本の30年の停滞を生んだ。世界中が走りつづけているのに、日本だけが眠ったようになった。活力を削がれるような仕組みを作られたのだ。では、そうした弱肉強食の税制で利益を得たのは誰なのか?
ここで疑問に思うのが、企業を支えているのは従業員だ。一般国民だ。その一般国民を軽んじるような税制で、本当に企業が強くなったのかと言うことだ。これを次項で検証する。
参照:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)
日本の社会保障費負担は世界でもトップレベルで、福祉国家として有名な北欧諸国よりも高負担だ。にも関わらず、社会保障サービスが低下し続けたために、いまでは負担に見合ったサービスが望めなくなってきている。これ以上の「社会保障費の抑制」は、社会的弱者を更に追い詰めることにも繋がる。
一方、消費税は安定財源なので、不景気でも容赦なく取り立てる代わりに、好景気でも大きな税収増は望めない。消費税収を増やすためには、消費税率の引き上げが必要だが、そうすると景気後退により、さらに総税収が減るという失政を繰り返してきたことはデータを見れば明らかだ。
私は、税制を1988年度以前のものに戻せば、日本は経済成長を取り戻し、所得増も回復し、プライマリーバランスの黒字化も達成できると見ている。
ここ30年余りの政権と同じことをしていて、岸田政権だけが財政を再建できるとは思えないのだが。
・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)
・著書案内:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)
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