・多様性を否定する社会は脆弱
━━━━━━━━━━━ Seminar on Trading ━━━━━━━━━━━
殿堂入りメールマガジン:「相場はあなたの夢をかなえる」
☆無料版(参照&登録):https://www.mag2.com/m/0000031054.html☆
「生き残りのディーリング」の著者による経済と相場の解説(折に触れて)
★有料版(\840税込:購読登録):http://www.mag2.com/m/0001111340.html★
まぐまぐ大賞2016:資産運用(予想的中!)第1位(毎週月曜日)
━━━━━━━━━━━━【 Dealer's WEB 】━━━━━━━━━━━━━
・iPad、iPhoneでお読みの方は、上部アドレスバーにある[リーダー]をクリックすると、読みやすくなります。
☆多様性を否定する社会は脆弱
・副操縦士よりも機長の方が墜落事故を起こしやすい
ダイヤモンドから、「中国の規制強化は長期的成長を見据えてのこと」だとする記事を引用する。
(引用ここから、URLまで)
「米国政府は中国をモンスター呼ばわりするが、米国などのリベラル能力資本主義と中国の権威主義的資本主義は、グローバリゼーションやICT革命が生み出した双子の兄弟ともいえる」
「イノベーションの象徴だった巨大テック企業が、イノベーションを阻害し始めている。米国の新規上場数が減っていた一因は、自らの脅威となる新興企業を大企業が買収していることだ。IT企業、非IT企業に拘わらず、大企業のマークアップ比率や資本収益率は上昇傾向にあるが、それはイノベーションではなく、ICT技術を駆使して市場集中が進んでいるからである」
「市場集中が進んだ結果、巨大になった企業が労働市場などでも独占力を発揮し始めていることである。もうかっても賃金を増やさない、ということであり、労働分配率の低下傾向を強めると同時に、企業貯蓄の増大につながる。
無形資産の時代であるから、大企業、特に巨大テック企業が投資を行うにも、以前の有形資産の時代のようには資金を必要としない。また、企業の保有者は支出性向の低い富裕層であり、そのことは自然利子率を低下させ、マクロ経済成長の阻害要因となる」
「現在の米国では、企業献金は事実上の青天井である。巨大テック企業が反トラスト法の適用を避けられているのは、ロビーイング活動のおかげだ。知財権の過剰な保護も、既得権者である大企業が金にモノを言わせ、政治力を発揮しているからである。巨万の富を持つ人々が強力な政治力を発揮し、競争政策をないがしろにするのは、リベラル能力資本主義のダークサイドではないか」
「中国が巨大テック企業への規制を強化し始めたことを、どう考えればよいか。元々、中国は、消費者保護はそっちのけで、ビジネスの拡大を重視していた。重商主義的政策ともいえるのだが、今回はそれが転換され、アニマル・スピリッツが失われると批判する人も少なくない。
しかし、これまで論じたように、巨大テック企業が独占力を発揮し始めれば、むしろイノベーションは阻害され、長い目で見れば経済成長の足かせになる」
「中国人民も子弟の教育に血眼だ。新たにテークオフした新興国は、先進国以上にメリトクラシー(編集部注:生まれではなく能力で地位が決まる社会原理)が重んじられ、家庭は教育に力を注ぐ。
その結果、住居費と並んで教育費の高騰が出生数を低迷させる。費用が負担できない若者は、結婚も諦め、『寝そべり族』となる。巨大テック企業だけでなく、中国政府が教育産業への介入を始めたのも、教育費の膨張が、社会の再生産を困難にするリスクがあると考えたからだ」
「中国型の権威主義的資本主義は、自由の代償として高成長を約束してきた。体制を守るため、リベラル能力資本主義国以上に、経済成長には敏感である。一連の施策は成長を否定するようにもみえるが、目先の成長だけを追求すれば、経済格差や教育格差が深刻化し、長期の成長の桎梏(しっこく)ともなるため、経済成長の質を問い始めたのだろう。
株価が下がる政策は悪い政策と考えるリベラル能力資本主義からすれば、中国の政策はトンデモナイ政策に映る。ただ、長期的視点で見れば、果たしてどちらがマシだろう」
参照:中国のテック・教育産業への介入が、実は長期的成長を見据えている2つの理由
鋭い指摘ではないだろうか? 民主主義の欠点は、「いい事を言う人」より、「分かりやすい事を言う人」、「一般受けする人」の方が支持されるところにある。これは当然で、どんなに「いい事を言っているようだが」でも、分からなければ支持できないからだ。そして、資金力があれば「分かりやすく」世論を誘導することが可能だ。
上記の、「企業の保有者は支出性向の低い富裕層」に関して、私は新著で以下のように述べている。
「貧富格差の拡大が世界的なデフレ傾向を強めていることを示唆している。1億人が10年に1度車を買えば、毎年1000万台が売れる。一方、10人の富豪が毎年100台買っても、1000台にしかならない。世界の中央銀行が前例のない規模の資金供給を行っているが、その多くは富豪たちの金庫に吸い込まれているのだ」
参照:日本が幸せになれるシステム(著者:矢口 新、Kindle Edition)
第二章:つくられた貧富格差拡大「33、つくられた貧富格差拡大」
中国政府が唱えている「共同富裕」とは、「先富論」の時代が終わったことを意味している。皆が貧しい時代には、国や社会を富ますことさえできれば、黒い猫でも白い猫でも良かった。しかし、結果的に貧富格差が大きくなりすぎ、中産層の購買力が低下し始めると、今度は国や社会が貧しくなっていく。これは多くの先進国で起きていることで、中国でも目立ち始めてきていた。
「巨万の富を持つ人々が強力な政治力を発揮し、競争政策をないがしろにするのは、リベラル能力資本主義のダークサイド」で、票を金で買える民主主義の欠点でもあるのだ。(中国は国際機関でこうした民主主義の弱点を利用しているのだが)。米国や日本では、それが国や社会全体の破壊に繋がることが分かっていても、巨万の富を持つ人々の外圧を含む強力な政治力には勝てないでいるのだ。
また、コロナ対策でも明らかだったのは、日米の政府が迅速な対策を取ろうにも、多くの関係各所との調整が長引いたのに対して、中国では政府の号令一下で極めて「効率的に」事が運んだことだ。
では、民主主義を排除し、こうした少数のエリートによる独断政治がいいのだろうか?
私はそうは思わない。なぜなら、「最適化の罠」というものがあるからだ。
例えば、相場では、バックテストをもとにしたプログラミングで最適化し、絶対に儲けられるシステムというものをつくろうとすることがある。
ところが、バックテストでは最適のプログラムが、全く役に立たないことが多いのだ。なぜなら、過去のデータに過度の最適化を行ったからだ。
例えば、2019年につくった最適化プログラムは、今では「何らかの修正を加えないと」役立たないはずだ。当時の世界のどのプログラムにも、「Covid-19」の影響や対策が組み込まれていなかったからだ。
相場だけでなく、生きるということは、未来に向けて進むことだ。この1年間、5年間、10年間と振り返って見れば誰にでも分かるが、明日、何が起きるかなど誰にも分からない。
歴史や知識、経験に学ぶことは重要だが、信じ込んではいけない。少なくとも、相場は次々と起きることへ、「何らかの修正を加え続ける」という対処の連続なのだ。
知識や経験に優れているはずの人が、むしろ危機対応ができないということすらある。副操縦士よりも機長の方が墜落事故を起こしやすいというのだ。
以下にダイヤモンドから引用する。
(引用ここから、URLまで)
「このような世界において、大きな権力を有するごく一部の人々だけが意思決定するというのはシステムとして非常に脆弱です。なぜなら、状況の不確実性が高まれば高まるほど、そこに関わる人がフラットな関係でコミュニケーションをすることが必須になるからです。これをわかりやすく示しているのが航空機における事故統計です。
通常、旅客機では機長と副操縦士が職務を分担してフライトします。もちろん、一般的には操縦技術や状況判断能力の面で機長の方が副操縦士より格段に優れています。しかし、過去の航空機事故の例を見れば、機長自身が操縦桿を握っている時の方が、はるかに墜落事故が起こりやすいことがわかっています。
なぜか?機長が操縦桿を握っている時には、副操縦士が意思決定に参加しなくなるからです。
権力が偏在化すると意思決定の品質が劣化する
コックピット内で、よりクオリティの高い意思決定を行おうとした場合、お互いの行動や判断に対してお互いがチェックし、もしそこに問題があるようであれば異議を唱えるということが必要となります。副操縦士が操縦桿を握っている場合、上役である機長が副操縦士の行動や判断に対してそうすることはごく自然にできるでしょう。
しかし機長が操縦桿を握っている際、目下である副操縦士は機長の行動や判断に対して異議を唱えられるでしょうか? もし、思うところがあったとしてもそれを口に出して意見できなければ意思決定の品質は劣化してしまうことになります。つまり、権力が偏在化するシステムでは意思決定の品質が劣化するのです」
参照:副操縦士よりも機長の方が墜落事故を起こしやすい意外な理由とは?
その意味で、中国の極めて少数の人々が意思決定するシステムは脆弱だ。また、一部の大富豪が実質的に意思決定している現在の民主主義のシステムも脆弱だ。多様性を否定し、違う生き方や反対意見を封じ込めようとする社会は脆弱なのだ。
「状況の不確実性が高まれば高まるほど、そこに関わる人がフラットな関係でコミュニケーションをすることが必須」。心に刻んでおきたいものだ。
・新著案内:日本が幸せになれるシステム(著者:矢口 新、Kindle Edition:\500)
65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方
・New Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?:
How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition \875)
---------------------- Seminar on Trading ---------------------
毎日、数行! マーケット情報で学ぶ経済英語!
☆無料(参照&登録):https://www.mag2.com/m/0000142830.html☆
一週間のまとめはブログでも読めます:https://ameblo.jp/dealersweb-inc/
------------------------【 Dealer's WEB 】-----------------------
☆「矢口新の短期トレード教室」
転換点を見極め、利益を残す方法を学ぶ
http://www.tradersshop.com/bin/showprod?c=9784775991541