安田昌夫にとって旅行に出るということは、いくつかの重要な意味を持っています。大きな目的は、日々の単調な生活の繰り返しの中に、とびきり新鮮な感動を持ち込むということです。人は多かれ少なかれ、毎日決まった時間に起き、決まった時間に仕事や家事をこなして、明日に備えて眠るという繰り返しの日々を過ごしているのではないでしょうか。安田昌夫もやはりそのような生活の繰り返しの中に生きています。しかし旅行に出ると、その繰り返しのリズムが良い意味で壊され、イレギュラーな体験が新鮮な感動をもたらしてくれるので、明日からも頑張ろうという気持ちを与えてくれるわけです。定期的に気持ちをリフレッシュさせてくれるこの体験こそが、旅行が持つ大きな魅力です。

しかし安田昌夫が旅行に出る目的はそれだけではありません。訪れた旅先で、その地の成り立ちや来歴を訪ねる郷土史探求も大きな楽しみの一つなのです。全国津々浦々、すべて旅することができれば一番良いのですが、すべて行き切れるものではありません。訪れた場所には何かのご縁があるようにも思います。一期一会の思いで、その地の歴史を深く知るというのも面白いものです。どんな人々がここで生きて、どういう思いでこの地を栄えさせてきたのか、短い滞在時間の中でも、まるで自分の故郷のような愛着を持ってその地に寄りそえることが何より旅の充実感を抱かせてくれます。安田昌夫はなぜ旅行に出るのか、と問われたら、この郷土史探求も大きな目的であると答えることにしています。