住吉神社(青梅市)と猫の関係
私は主に古い石造物について調べているが、調査場所は主に古道に建立されている石造物の他に神社仏閣内も調査対象となっている。先日、青梅市(東京都)に用事があって、その帰りに住吉神社に参拝してきた。
先ず、青梅市に足を踏み入れると猫たちの文化があちこちにあって、青梅市は猫のまちという印象を強く受ける。この理由はJR青梅駅の近くにある住吉神社に行けばよく分かる。二の鳥居の傍に「大黒天猫」と「恵比寿天猫」が左右に鎮座しているのである。一般の参拝者は単なる「猫」だと面白がって見る人が多いが、これにはちゃんとした理由があるのである。まず第一に、猫は養蚕における害獣、すなわち、ネズミたちを退治してくれる存在だったので大切にされていたことが昔から伝えられているからである。
まちのあちこちに「猫」たちがあふれている
三福神に祀り上げられた「猫」たち
昔は、現代と違って正月に七福神詣りをするような文化ではなかったようである。我々が子供の時代にも正月に七福神詣りをするような習慣はなかった。要するに、昔の人々は正月に初詣に行くときに「交通安全」「家内安全」「商売繁盛」、この三つのことを各地に鎮座する神々にお願いしたのである。「交通安全」は庚申(猿田彦)、「家内安全」は大黒天(甲子)、「商売繁盛」は恵比寿天、弁財天(己巳)という相場だったのである。これは今でも暦の中段に記されている。
現在でも暦の中段に「庚申」「己巳」「甲子」が記されている
二の鳥居近くに鎮座する「大黒天猫」と「恵比寿天猫」
猿田彦大神(庚申)が近くに建立されている
住吉神社(青梅市)の縁起
この住吉神社は応安2年(1369)に近くにある延命寺の開山李竜が同寺創建にあたり、寺背にあたる当地に故郷摂津国住吉大社を勧請したことに始まるというから、とても古いことがよく分かる。地元の伝えでは、住吉神社建立にあたり京都から職人を呼び寄せて建築にあたらせたというから、当時としては最先端の職人集団が当地に集結していたのである。
住吉神社の一の鳥居
住吉神社本殿
支え木などにびっくりさせられる「透かし掘」の技法がみられる