馬頭観(世)音とは何か

 

馬頭観音とは仏教の世界においては六道の中に組み入れられて、主に畜生道を救済する観音様として知られている。

しかしながら、この馬頭観音は江戸時代まで行われてきた「検地」には必ずと言ってよいほど住民台帳の中に「馬」何匹としるされているように、古来から大事にされてきたことが分かる。

 

馬頭観音塔を何故建立してきたか?

 

これまでの馬頭観音塔を調べてきたが、建立した背景を調べていくと①道普請の成果として建立、②馬のお墓、③捨て場の三つの要素があったことが自ずと分かってくる。

 

①道普請の成果として建立

 

江戸時代の頃までは村の道路整備は、現在のような国土交通省のような組織は存在しておらず、村々で計画的に道普請を行い、証として建立されてきた。

路傍に建つ馬頭観音塔は「道普請」の証として建立されてきた

 

②死んだ愛馬の墓標として建立

 

江戸時代の頃までは「馬」は人間と同じ扱いをされており、愛馬が死んだ後、供養のために建立した。

愛馬の死後、供養のために建立された馬頭観音塔

 

③死馬捨て場に建立されてきた馬頭観音塔

 

江戸時代まで各地に「死場捨て場」と呼ばれる場所があり、その目印として建立した。

江戸時代に作成されてきた「御評定所裁許掟」の21項目に「死馬捨て場」が明記されており、各地に死んだ馬の捨て場があったことが分かる。東京都あきる野市に伝わる古文書には「死んだ馬を山の崖からつき落とした」と明記されており、確かに山の尾根道に馬頭観音塔が建立されている。従って、この馬頭観音塔は「死馬捨て場」の目印として建立されたらしいことが分かる。

桜尾根道と呼ばれる古道に建立された馬頭観音塔