何故、日本国内にギリシャ神話の「死を象徴する首」がある?
東京都あきる野市の寺院の一角に人面が刻像された石造物がある。お寺の関係者に理由を聞いても詳しいことは分からないと言う。造形から見てみても日本人離れしている。たまたま目に留まった「神話と民俗のかたち(井本英一:東洋書林)」に面白いギリシャ神話が載っていたので紹介したい。
〇死を象徴する首
パウサニアス(ギリシャ神話研究者)によると、アルゴスのアゴラの中心部に近い所に塚があり、メドゥーサの首が埋められていると伝えられていた。メドゥーサ(ゴルゴーン三姉妹の末っ子)はペルセウスに征服されて首を切られリビアからペレポネソスにもって帰られたという。アゴラは古くはギリシャの都市の入り口に設けられた広場で、青空市場であり、情報の伝達をする集会場であった。アゴラは一方、処刑場でもあった。このことは古代の多くの文化で共通してみられるところである。ゴルゴーン三姉妹のうち、メドゥーサだけは不死でなく、死ぬ運命にあった。パウサニアスによると、メドゥーサの墓の傍にペルセウスの娘の墓があった。これは一処二祭場の原則に立った祭祀のやり方で、アゴラの市神とされたと考えられる。メドゥーサは首だけを祭ったが、それは面であるが彫刻であった。メドゥーサは死を象徴し、ペルセウスの娘は再生を象徴した。
不思議な顔の刻像はギリシャ神話に出てくるメドゥーサではないか?