巷にみられる石造物の多くが亡くなった人々の「鎮魂と供養」を目的として建立されていると言われている。ところが、日本人のご先祖たちは、人形や針、敷石や石橋といったものまで幅広く供養していたのである。石造物の調査をしていても神社や寺院の石段にまでその面影がみられる。下の写真にあるように石段に文字が刻印されたものや石仏の台座などが整然と積み上げられているのである。よくこういった工法は石材が不足していたからだなどと自信ありげに説明する輩がいるが、これは大きな間違いである。プロの石工であれば神聖な石材をこのように表面に向けて積み上げたりはしない。もし本当に石材が不足していたなら、台座や文字塔の表面を隠すように積み上げるだろう。日本古来の石橋供養や敷石供養というものは、何度も何度も人間たちに踏まれて大変だろうと考えて供養を行っていたようである。このようなことを思い浮かべて古い石段を歩いていると「石」にも魂が宿っていると考えた古来日本人たちが石供養のために、このような工法を編み出したということを理解すべきだと考える。
文字塔を石段に使った例
石造物の台座を石段に使った例