寒念仏塔の見方で説明しているように、寒念仏塔は特に親の寒念仏塔には石灰岩を使ったものが多くみられる。この謎解きのヒントになるものが東京都あきる野市原小宮地区の「桜株」にある寒念仏塔である。ここの寒念仏塔には珍しいことに丸い穴が人工的に加工され開いている。これは、日本から遥か3500Kmほど南にあるミクロネシアのヤップ島で古くから伝え残されている「石貨」に相通じるものがある。「石貨」の材料は石灰岩である。しかし、ヤップ島には石灰岩は存在せず、500Kmも離れたパラオ島から舟で運んでいたことが知られている。ヤップ島ではこれらの石貨を村の入り口などに建立しており、信仰の対象としていたようである。この「石貨」は現地の言葉で「フェ」と「ライ」の呼びかたがあり、二語合わせると「フェライ」となるが、これは日本各地にある地名、「平井」につながってくるように思う。この発想は鹿児島の宮古島に伝わる伝説の中にある。宮古島の伝説によれば、人々が最初に宮古島に入植して村を作った時の村名が「平井」なのである。ミクロネシアの人々は昔から海洋民族であり、ハワイ島などにも足跡を残しているから日本にも「石貨」の文化が伝わってきたのではないだろうか。

 

穴の開いた寒念仏塔と石貨

 

 

黄金に輝く極楽浄土

 

日本における極楽浄土信仰では極楽浄土には阿弥陀如来がいて、そこは黄金に輝く世界だと伝承されてきた。その考え方が「石貨」に通じるものがあり、寒念仏信仰では極楽浄土の黄金伝承とつながってきたのではないかと考えている。

(東京都あきる野市の大悲願寺観音堂に描かれた極楽浄土絵、阿弥陀如来は黄金色で描かれている)

 

寒念仏信仰の主尊は阿弥陀如来

 

写真にあるように寒念仏塔の上部に刻印されている種字は阿弥陀如来を表す「キリーク」である。