電車の揺れるリズムがまるでゆりかごのようで眠気を誘う
重たいまぶたを押し上げるがなかなか全ては開かない
眠い
今日も赤司君のハードな練習量にみんなバテてしまっていた
赤司も息を切らしていたが彼には微妙でとても気味の悪い笑があった
黒子はそんな赤司のことをサドだと思うと同時に
惹かれる
とも感じていた
赤司征十郎は黒子の秘められた性質
つまり影の存在に気がつくほど人間を見るのが上手い
いつも黒子が人間観察しているのにも関わらず彼は黒子の上をゆく
彼の才能には勝てないのだと黒子も理解しようとしていた
しようと
電車の心地よい動きがゆっくりと止まった
完全に止まってから黒子は目を開けた
先程のようなまぶたの重さはどこかに消えたいた
『線路上に何か異物があるようなので……』
女の人の鼻声気味なお決まりなアナウンスが車内に響く
完全に目が覚めてしまった黒子は車内の席で一人あたりをキョロキョロとした
特に誰かを探しているわけではなかったが
この少し変わった空間で人々がどのような行動をとるのかなどが気になった
流し目であたりを見ていると隣りの車両に見覚えのある色が見えた
分厚い窓を二つ越しにも綺麗に見えるその赤い髪の毛
ギラリと鈍く光る色違いの目
赤司だ
彼はただ外を眺めている
一体その何も考えていなさそうな瞳は今どんな難しいことを考えているのだろう
彼のことだ
きっと明日の練習メニューでも考えているのだろう
本当に真面目で
えげつない
そんなことを考えていると電車にアナウンスが入ってきた
『……出発いたします』
電車がまたゆっくりと動き出した
揺れがまた眠気を連れ戻くる
またまぶたを必死で持ち上げる
赤司を見たいがために
電車というのはまるで自分と赤司のようだ
どれだけ追いつこうとしても彼の所には追いつけない
ああ、嫌になる
努力してもダメだ何て言いたくないけれど
僕はいつ赤司に追いつけるのだろう
あのキレイな髪に瞳にいつ触れることができるのだろう
そんなことを永遠に思いながらまぶたを閉じた
『おやすみ、テツヤ ずっと僕の手の中でオドレ』