喪われゆくもの | Market Cafe Revival (Since 1998)

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四つの単語でできた言葉の中で、最も高くつくものは「今度ばかりは違う」である(This time is different.)。



☆ 人間の記憶は,後発的な情報によって改変されていく。その殆どは本人にとって都合の良い方向を向いている。そして都合の良い記憶が幅を利かせている間に歴史という形が出来上がっていく。正史とはその時代の支配者(層)による公式の記録であるから,都合の悪いことはあまり触れないことになる。後生がそれを鵜呑みにすると祖法遵守のような形骸化を招き,往々にしてその支配を危うくする。何世代もの後から正史とは異なる事実が発掘されることも多々ある。

☆ 歴史の話でなく,流行歌の歌詩がそうしたものの一つであることに気付くのは,昔のヒット曲が自分の生活体験を反映している限り,なつメロになったあたりで聴き直してみると「あの頃」の光景が浮かんできて,それが現実の同じ場所ともはや同じではないことに気付かされるからだろう。

☆ 記憶を改変するように街を改変していくことが「進化」だとまだ思われているから,あるいはそれはタテマエで,経済的発展こそが進化であるから発展のために過去は改変されるべきなのだという資本主義の論理らしきものがその裏側に潜んでいるのかもしれない。

☆ 改変されていく傾向のある記憶との戦いの場は,法廷などあまり多くない。あまり多くない方が良いのだ。他の人に迷惑を掛けない範囲であれば,自分の記憶をある程度美化しても良いのかもしれない。