MS 日本市場投資戦略
2009 年末TOPIX を870 と予想:環境は厳しい
回復感は限定的:財政や金利・クレジット補完政策の効果は限定的。TOPIX は基本ケースでP/E20 倍、870 程度を中心として、幅の広いボックス圏での展開となろう。
2009 年度下期の回復に期待:中間決算期の08 年度会社予想利益成長率引き下げで、当面のセンチメントは悪化。日米の政策への投資家の信頼感は低い。強気ケースを1,000、弱気ケースを570 とする。
08 年度34%減益、09 年度さらに16%減益:弊社トップダウン予想に従い、基本ケースは厳しい減益の継続を予想。ただし減益はノーマルな状態からの下ブレと評価され、P/Eが20 倍に膨らむと想定。(ボトムアップ予想は現在09 年度+10.5%)中期的にマージンを拡大できる12 銘柄に注目:市場の信頼感回復までディフェンシブを中心としたポートフォリオを勧める。一方、中期的には、マージンが改善できる企業を勧める。弊社アナリストが選ぶ「2012 年に企業のフランチャイズ、ビジネスモデル、市場での位置付けが最高水準である企業」は、JT、信越化学工業、武田薬品工業、ヤフー、トレンドマイクロ、ブリヂストン、日本板硝子、日立金属、トヨタ自動車、任天堂、三菱商事、ヤマダ電機、の12 銘柄である。
政策の効果は限定的
グローバルな景気回復は早くても09 年度下半期からとなると想定する。センチメントの本格的改善も遠のく。TOPIX は基本ケースでP/E20 倍、09 年末にかけて870 程度を中心としたレンジで推移すると予想する。
市場の回復への信頼感は低い
中間決算期の08 年度会社予想利益成長率引き下げで、当面のセンチメントは悪化。東洋経済予想経常利益成長率は08 年度について-26%となっている。09 年度の回復について、日米の政策への投資家の信頼感は低い。米国大統領の交代時期であること、銀行の貸し渋りなどが進行中であることなどの影響を受けていると思われる。
強気ケースにおいても、09 年度の企業収益のプラス成長を想定できない(-10%)ため、1,000 とする。原材料費の安定が予想される中で、売上げが回復するならば、利益は回復に向かう。しかし、それは簡単には達成できそうにない。
一方で、弱気ケースにおいては、成長率低迷が2009 年度においても08 年度と同程度のスピードで続くと見ており、570 に留まると想定する。
今後1 年のシナリオ(背景)
TOPIX目標値 870
09 年後半までの景気後退で2 期連続減益を想定。政策効果は限定的でセンチメント改善は緩やか。
強気ケース 1,000
-30%(F08)、-10%(F09)成長、P/E 20 倍。米国経済回復の兆し。企業収益は09 年度に減益幅縮小。原材料費安定期待強まる。
基本ケース 870
-34%(F08)、-16%(F09)成長、P/E 20 倍。米国のリセッションで09 年度低迷、クレジット市場正常化遅れ、円高の恐れ継続、リスク資産への資金回帰は限定的。
弱気ケース 570
-40%(F08)、-40%(F09)成長、P/E 20 倍。欧米のリセッションは長引き、円高傾向続く。政策が効かずクレジット・クランチからの脱却遅れ世界デフレ懸念。株価は将来価値が支え。
08 年度34%経常減益、09 年度さらに16%減益
弊社トップダウン予想に従い、基本ケースは厳しい減益の継続を予想。08 年度予想利益については、中間決算を機にボトムアップ(アナリスト予想)の大幅な下方修正が続いた。
ボトムアップ予想はトップダウン予想に近づきつつある。今後、09 年度予想利益の水準が焦点となるが、アナリストは、08 年度下期の落ち込みに影響されて、09年度の予想をさらに下げざるを得なくなるだろう。ボトムアップ予想がトップダウン予想に対して同程度に悪化したときに、センチメントのボトムが来ると期待できる。
ただし、センチメント悪化の理由は、利益成長懸念だけではなく、クレジット市場の混乱にもある。米国政府やFed が次々に出す政策が、ある程度の時間をおいて効果を発揮すると考えるものの、市場が効果に信頼を持ち始めるタイミングを予想することが難しい。
P/E は簡単に18~20 倍に戻る可能性がある
2006~07 年にかけて、TOPIX のP/E は東洋経済2 期先予想純利益ベースで18~20 倍で推移していた。09 年度の利益水準が日本企業がノーマルな状態で持っている水準よりも低いと市場が気付いたとたんに、P/E は大幅に拡大する可能性がある。
中期的にマージンを拡大できる12 銘柄に注目
短期的にディフェンシブ継続:市場の信頼感回復までディフェンシブを中心としたポートフォリオを勧める。原材料価格の調整で、電力・ガスの安定性が注目される。消費財・サービスセクターには外部環境に影響されにくい企業が多い。ヘルスケアは、マージン水準が高いため、売上げの変動に利益成長が影響される度合いが小さい。
回復期に金融・ブルーチップ:早ければ09 年夏以降、市場が落ち着きを取り戻す可能性がある。マクロ経済については、米国の新大統領の政策が明確になるなどがきっかけとなりうる。また、Fed などの追加政策で、クレジット市場が落ち着きを取り戻すことも期待される。米国の回復への道筋が見え始めれば、為替市場にも落ち着きが戻るだろう。結果として、グローバル・ブルーチップや金融関連への物色が起こるだろう。
中期的にマージンが改善できる企業:金融危機後の日本株市場において、キーワードは「ディレバレッジ」ではない。97 年の金融危機以来、レバレッジの削減は進んでいる。企業が安定的に事業を進めたいと思うならば、マージンを高める必要がある。日本企業が一般に世界景気に「ハイベータ」とされる理由は、マージンが低いことで利益のボラティリティが高くなっていることにある。今後、日本企業は、5~10 年をかけて緩やかに、しかし確実にマージン改善を進めるだろう。
その先導役として期待できるのが「12 for 2012(2012 年に向けての選定12 銘柄)」である。弊社アナリストが選ぶ「2012 年に企業のフランチャイズ、ビジネスモデル、市場での位置付けが最高水準である企業」は、JT、信越化学工業、武田薬品工業、ヤフー、トレンドマイクロ、ブリヂストン、日本板硝子、日立金属、トヨタ自動車、任天堂、三菱商事、ヤマダ電機、の12 銘柄である。
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