「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」 | 雑踏に紛れて

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風の吹くまま、雲の赴くまま、常に過ぎ行く刹那、
闘うナルシスト、エゴイスト、ギタリスト、
日々の状態や思うがままの主観、

 

 

 

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」

 

12話。

 

何だか平和で楽しい軍隊だなーなんて、ずっと思っていた。

絶対音感であったり、澄んだトランペットのソロだったり、

そういう音楽的要素がきちんと戦争の中に、

役割としてあった。

 

正直10話くらいまでは、何ていうか、絵はきれいだし、

キャラは・・どこかで見たような感じのキャラの寄せ集め的だが、

それぞれに調和していたし、全然悪くはなかったのだけれど、

どこか奥行きのない、平々凡々な感じが否めなかった。

 

それはバックグラウンドで設定されている、

国同士の戦争、その現状や歴史、伝説や人と人との関わり合いが、

ひどく蔑ろにされていた感が否めなかった。

 

でも、これは最終的に裏切られることになる。勿論いい意味で。

最終2話で全てが繋がって、一つのカタストロフへと、

怒涛のように収束してゆくのだ。

 

ちょっとそれは、ある意味強引であったのかもしれない。

でも、それまでの描写、展開を、一気にひっくり返す手段としては、

すんごくアリだと思う。

 

はっきり言って、びっくりした。

 

オープニングで流れる、BGVは、かの有名なクリムトの天使の絵。

その意味がやっと分かる辺り、これは侮れない。

 

おそらく、前半から中盤までを退屈ーに見てた人には、

唐突で、多少強引なくらいバカでかい展開に、あたふたして、

もしかしたら、ついてこられなくて、ポカンかもしれない。

 

これは、色んな意味で僕を裏切った作品。

ちょっとストイックに過ぎるけどね。

 

タイトルにも、きちんとそれは反映されていて、

ちょっと思い入れがある言葉が入っていると、

どうしても放っておけない。

 

あれ、こいつはあの作品の誰で、こっちは別の作品の誰か、だよね、

なーんて、当初無粋なことばかり考えていたのだけれど、

そうじゃなかった。

 

だからいいのかもしれない。

うん、それはある種カマかけのような、

オマエ、どうよ、的挑発なのだ。

 

声優さんもキャラも印象操作や誘導尋問みたいに、僕を試す。

そこに負けじとついていくのだけれど、

いつの間にか、この作品自体の根底にあるものに、

きちんと乗せられてゆく。

 

まぁ、ぶっちゃけ、導入の長い物語なわけだ。

そこをもうちょっと描写しておけば、もっと・・・なんて、

思うことはある。

 

これはユーザーへの挑戦なのか?

なーんて僕はゆったり観られて本当に良かった。

 

実際の戦争モノとはまるで違う、

元々サイドストーリーをメインに据えたようなものだから、

戦争の側面が主だっていて当たり前なのだけれど、

その辺から勘違いしてしまったならば、全然楽しめないのだと思う。

 

やっぱり、この、土地も時代も全然分からない、

一種のファンタジーの世界なんだけれど、

そこにトランペットの大きな役割、人を思う心。

 

んー、何だ、すごくいいものに触れたような気になってしまう。

まぁ、ガルパンみたいなものとは対極にあるものだ。

 

ちょっと興味があって、クリムトを調べてみたのだけれど、

これがまた、面白い。

気になる方は是非、Wikiってみてね。

 

 

実は僕も中学生の頃、ラッパ吹きだった。

トランペットの2ndだったのだけれど、

本当にいい音が出せた時の快感ったらない。

 

それまで鬱屈し、鬱積していた何か、そういうのを一気に発散させる。

そんな力があると思う。

 

ただ、この物語の中で、幾許かの残念に思うところを、

挙げるとするならば・・・。

 

ひとりひとりの登場人物の背景をもう少し丁寧に描いても良かった。

まぁ、最後のどんでん返しは、ある程度予想できたし、

それはいいとしても、それなりに個々のバックグラウンドがあったら、

もっと良かったような気がする。

 

少なくともそうしておけば、最後の最後、わけがわからん、みたいな、

変な感想は出てこないと思うのだ。

 

ともかく、こういう謎の舞台、リアルだけれど謎に満ちた世界観。

これは純粋に楽しい。

タケミカヅチも伝説の炎の天使も、ガラス細工の工場も、孤児院も、

妙に不思議な感覚のリアルさを持って、

あながちあり得ないものでもないような、そんな感じを受ける。

 

そういう場所って、きっと生きるのには厳しいんだと思うけれど、

なんか行ってみたい、住んでみたい、暮らしてみたい、って

純粋に思うのだ。

 

不思議なものだ。

純粋なファンタジーじゃないけれど、変に歴史物でもなく、

戦時中とは言え、戦争のシーンは最後にちょっとだけ。

妙に平和でわちゃわちゃ騒がしい雰囲気が、何とも言えない。

 

ちょっとどころじゃない、結構な影響を受けてしまった僕は、

何だか奇妙な創作意欲を頂いて、だいぶ満足。

 

だから思えるのかもしれないけれど、

新旧を繋ぐものは、結局は技術や思想だけではなく、

夢や伝説、人を思う気持ちだったりするのかなぁって。

 

そんな物語もいい。

メモしておく。うん、忘れないようにね。

 

そういうストーリー性って、なかなか思うようには出せない。

勉強になりますな。何でも。

 

 

 

というわけで、やっと、1シーズン完結の作品を見てご満悦な僕。

続きものは、途中で間が空くから、しれっと忘れちゃったりするしね。

 

 

短期完結。

よし、これから少し、この路線でいってみよう。