「レミーのおいしいレストラン」 | 雑踏に紛れて

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「レミーのおいしいレストラン」

 

111分。

 

やっぱりPIXAR。

すごい。

 

こういうの、すごくアメリカチックで、夢がある。

そして、久しぶりに観るミュージカルじゃないディズニー映画。

 

どうにもミュージカル要素の強いものが多いのは、

嫌いではないのだけれど、そればかりだと飽きてくる。

 

レミーというネズミ目線と、リングイニというダメ人間ダメシェフの目線、

両方から描かれていて、双方は言葉が通じない。

 

ネズミが相当に特殊な能力を持ち得ている辺り、

何となく、かもめのジョナサン的な特異性が面白いのだけれど、

それがきちんとダメ人間と合致して、世間を驚かせるのだ。

 

難があるとすれば、まぁ、強いて言えばということなのだけれど、

ネズミがちょっとリアル過ぎるかな。

 

これがもう少しアニメっぽくて、デフォルメされてた方が、

僕はいいと思う。

 

何故って、あの大量のネズミが蠢く様が、何ともリアルで、むしろ怖い。

生理的に嫌悪感を抱く人もいるんじゃないかな。

 

そういう僕も、少し気味が悪く感じられたほどで、

リアルさをアニメにどれくらい持ち込むかっていうのは難しいと思う。

 

プログラミングで、そのリアルな動きというのは、

より鮮明に、真に迫ったものとして、すごくいいのだけれど、

何せモチーフが、『料理』。

これはかなりの挑戦だったんじゃないかと思われ。

 

設定やストーリー展開としては、満点に近いと思う。

面白いと思うし、胸躍るものがある。

 

でも何故か、思わずネズミを毛嫌いしてしまう人間の性、

それも分かる気がするのだ。

 

そもそも、普段生活しているうえで、僕はネズミに遭遇することなんてない。

だから、唐突に出会ってしまった時なんかは、思わず固まってしまったり、

結構な勢いでビビってしまうわけなのだけれど、

それがあんなに大量に、しかも厨房にいて、

最終的にそれが素晴らしいものを生み出していたとしても、

僕にはストンと落とせない、妙なわだかまりが残ってしまうのだった。

 

おそらくこれが料理ではなく、例えばスポーツとか芸術とか、

そういうものだったら、きっと印象はだいぶ違ったのだと思う。

 

うーむ、もしかしたら僕は、自分自身の中に眠る地雷を、

新たに発見したのかも知れない。

 

基本的に、同じものが大量にいる(ある)というのは、

元々得意ではない。だいぶ苦手な部類に入る。

 

やっぱりここまでたくさん、しかもリアルに、ネズミがいたら、

と思ってしまうのは仕方のないことかも知れない。

 

だからこそ、もうミッキーマウスくらいデフォルメされてた方が、

キッズ向けとしても、(いや、むしろ大人が観る上で)必要な気もする。

 

そうか、ちょっと分かった。

これは子供が夢を追うのにちょうどいいのだ。

 

ネズミは昔から童話にもたくさん登場するし、

良いものであったり悪いものであったりすることはするけれど、

何気に普遍的存在である。

 

確かに、実際にそのような大群を見てしまった日には、

鳥肌が暫く治まらないだろうと思うのだけれど、

そこは敢えてキッズにしか分からない、独特の感性に訴える、

ひとつの方法なのかも知れない。

 

なるほど・・・、そう考えると色々と納得がいく。

 

例えば、進撃の巨人で、馬が隊列をなして駆け抜けてゆく。

あれだって、似たようなものと言えばそうとも言える。

 

でも、やっぱりちょっと違う。

勿論、あれだって、もっと密集してもっと大群だったら、

そう、水牛の大群みたいなものだったら、ちょっと違う。

 

けれど、やはりあまり考えたくないが、これが昆虫だったなら・・・。

うあぁぁぁ!想像するんじゃなかった・・・。

 

その辺りがきっと、大人が観る上での障害となりえるのかとも思う。

そもそも、確かにネズミさん達、全員で消毒液を浴びるシーンがあったけれど、

事実それこそが全てを物語っているかも知れない。

 

夢というより、そんなことにしか思いが届かない自分が情けないのだけれど、

まぁ、ファンタジーとして観れば、十分に魅力的な作品と言えるだろう。

 

このところダークファンタジーが世間を席巻しているけれど、

そんな中ではきちんとハッピーエンドで、上手く収まってる感じは、

流石にディズニー映画なのだと思う。

 

大体にして、ディズニー映画でバッドエンドってあるのかな。

それはそれで観てみたいような気もする。

 

悲しく終わる、そんなんじゃ、キッズは喜ばないか。

ガンダムシリーズの中で、鉄血のオルフェンズってあるけれど、

あれは相当な傑作だと信じてやまないが、

何と言っても、あの悲惨な終わり方・・・、グサグサ来たね。

 

ディズニーにあぁいうのは必要ないかも知れない。

夢はきちんとハッピーに昇華しなければならない。

 

目覚めた時に、あぁ良かったね!ってならないと、

キッズは夢に疑いを持ってしまうのだ。

 

これは別に幸せの押し売りではない。

だからこそ、大人は、もっと想像力や感性を磨くべきで、

リアルを知りすぎた故の不幸、というものも受け容れなくてはならない。

・・・のかも。

 

 

 

 

ある意味、忘れられない映画になった。

ラストの強烈な映画、ベストテンに入りそうな・・・。

 

でもね、夢だから!

夢!

 

そこ、忘れないように。