ブログでも何度か話題に出していますが

私のリンパケアの基礎になる考え方は 麻酔科にあります。

それもICU研修の時の循環管理 心臓と肺の管理です。

ちょっと難しい話になります。



$さとう式リンパケア


スターリングの曲線というのがあって 心臓の泊出量 仕事量と 

心臓のプレロード(前負荷)←負荷という言葉は嫌いなので 以降プレロードとします。

の関係です。

プレロードが高くなりすぎると心臓の泊出が減ってきます。

心臓に血液が入りすぎると 押し出せなくなってしまうというものです。

一般に心不全では心臓が押し出せなくなってしまって 結果としてプレロードが大きく

なってしまいます。中心静脈圧CVP =心臓に流れ込む大静脈の圧力 が

高い場合は心不全と診断されます。

心不全= 心臓の機能不全ですね。 死が近づいた状態です。

で大切なのは 流れ込むのは圧力ではなく 圧力差ということになります。

要するに 心臓内の圧力と 中心静脈の圧力の差なんですね。

これが血液が心臓に流れ込む圧力になるわけです。

本来 横軸は 拡張期圧でも 中心静脈圧でもなく 圧力差になるのですが

スターリングの曲線の図の横軸は殆ど絶対値が書いてあります。


わたしのHPにも少し書いているのですが

http://www.geocities.jp/ddwts503/peep.html


圧力そのもの(絶対値)は コントロールしにくいですが

圧力差はコントロールができます。 心臓の周りには肺が取り囲んでおり

肺に圧をかければ 心臓外からの血液との圧差がコントロールできます。

心臓に流れ込む 血液の圧の正常値は3~10cmH2O(水柱)

この水柱という単位は 水の高さで圧力を示したものです。1.3で割ると

およそのmmHg (水銀柱)になります。

それにたいして10cmH2O 以上が心不全の状態です。

10cmH2O以上の静脈圧では 心臓がふくれあがって 

収縮しにくくなってしまうんですね。

ですから私がいたICUでは CVPが20cmH2Oの人には

10gの呼気終末圧=肺の圧力=PEEP圧 をかけ続けて

心臓と心臓外からの血液の圧力差を 心臓の拍出量が最大になるように

コントロールしていました。


これが独自の理論と方法であったため 多くの人はビックリするんですね。

教科書には「PEEP圧をかけるとアウトプットが減る」としか書いていないのです。

それはプレロードが正常な人であって スターリングの曲線から言えば晃かです。

心臓と心臓外からの血液の圧差が少なくなりすぎるわけですね。

しかし心臓と心臓外からの血液の圧差が大きすぎれば 心臓の周りにかかる圧力で

心臓と心臓外からの血液の 圧力の差はコントロールできるのです。


要するに 心臓に流れ込む 血液の圧力がコントロールできれば

心臓の仕事量も最大限に引き出せるということです。



心不全でただでさえアウトプットが低くなっているのに PEEPをかけたら

もっとアウトプットが減ると考えるのが一般のお医者さんなんです。

教科書にそう書いてありますから。 しかし心不全の人にPEEPをかけると

アウトプットは確実に増える それは事実です。

目の前でみてきましたし 実験で検証すれば再現性のある物理的な作用です。



30年以上も前に鈴木重光先生が考えた理論ですが 未だに医学会の常識は

心不全にPEEPをかけてコントロールするというものは非常識とするでしょう。



これがリンパケアの基礎になっています。

筋肉が体液(間質リンパ)を吸い込む 圧力差=プレロードが最も大切なんです。

心臓も 筋肉のポンプ作用としての 役割は同じなんですね。



筋肉は弛緩する時に 間質リンパを吸い込みます。

そして収縮するときに 間質リンパを吐き出します。

これの繰り返しで 間質リンパが循環されるんですね。

筋肉が間質リンパという体液を吸ったり吐いたりして

体液は循環しているんです。

その吸う圧を適正にする プレロードを適正にするというのが

さとう式リンパケアなんです。

ポンプは水を吸わなければ吐き出せない

心不全では必ず 強心剤 利尿剤なんですね。

静脈圧を下げて ただでさえへたっている心臓をむち打つ

圧力のコントロールで心臓の環境を整えるのが鈴木先生の考え方です。

さとう式でも筋肉にむち打つことはありません。

圧力のコントロールで(圧をかけないことで)筋肉の環境を整えるのが

我々の考え方です。 筋肉を弛緩させることでより多くの間質リンパを

吸い込む 栄養素と酸素を吸い込む そしてより多くの 老廃物を

含んだ間質リンパを排泄する 血管とリンパ管に送り込む

筋肉(筋膜内)へは圧力で押し込もうとしても 入っていかないし

圧力をかければ そもそも血管から間質リンパが出て来ない!

もともと内圧が高まった筋肉がコリのある筋肉なんです。

圧力を抜くためにグイグイ押したら 筋肉は潰れてしまう。

ポンプは破壊されてしまうんです。圧力は抜けるが循環はしない

せいぜい炎症がおこって循環するが 

同時に再生がおこるのでより硬くなってしまう。

我々のコントロールはプレロードのコントロールで仕事量を増やすというものです。

やっぱり私の基礎は麻酔科にあるんだな~って 思います。