今まで顎関節症の治療は噛み合わせ=「咬合」によるものだと思われそれに対するアプローチがおこなわれてきました。顎関節症は歯科の治療がきっかけになっておこることが多く、多くの噛み合わせ治療が昔から、、、今なおおこなわれています。

しかしアメリカでは咬合(噛み合わせ)と顎関節症治療との関係が否定されています。私も「そんな馬鹿な!」って思っていました。実際に噛み合わせ治療をしていくと良くなることに遭遇しています。ところが良くなるのは一時的でまた悪くなってしまう人がいます。また顎関節に症状がある人も治療はしなくても安静にしていると悪いのは一時的でまた良くなっていく人がいます。最悪なのは治療をくりかえし、一時的に良くなって悪くなっての繰り返しでどんどん悪くなっていく人がいるのです。

アメリカのデータは噛み合わせ治療をしたひととしなかった人で、予後(その後)に違いが無いということです。

治療によって良くなる人もいるし悪くなる人もいる。

噛み合わせによって顎がずれる、筋肉の動きが制限されるという考え方があります。干渉といって大学ではそれを取るということを学んできました。当然治療直後に入れた歯が高かったり低かったりすると顎の軌道は制限され、筋肉や関節に負荷がかかります。

当然そういった症例では干渉を取り除く必要があります。ところが干渉が無い場合があるのです。矯正治療をした、がたがたの歯を直してブリッジを入れた、歯がないところにインプラントを入れた、干渉がないのに歯科医は一生懸命干渉を探しそれを取り除く=削るということをしようとします。私自身もそうでした。

干渉部分とあたると不快なので筋がそれをさけて軌道をつくってしまう。だから筋を緩めてから干渉を探そうとか、模型をとって干渉をみつける、、、とかマウスピースで習慣の動きを無くしてから干渉を探すとかコンピューターで解析するとか、いろいろなアプローチがおこなわれています。

でもちょっと待ってください。誰だって干渉なんてあるんです。歯に金属をいれて違和感がのこることがありますよね、でも普通は慣れてしまいますよね。完全な噛み合わせを求めるなんておかしいと思いませんか?多くの人が干渉があっても何ともないんです。

私は以前咀嚼筋にアプローチして筋肉を緩めてから干渉部分をとっていました、顎も肩もすごく楽になるのです、しかししばらくするとまた悪くなってしまう。なんとまた干渉ができているのです。筋を緩める技術のレベルがだんだんと上がってくると干渉をとらなくても同じ結果が得られる様になりました。するとあまり悪くならないし、場合によっては干渉が無くなっているのです。

干渉って何なんだろう?干渉をつくっているものは?何の力が顎に負荷を与えるの?どうして矯正治療をして顎関節が悪くなるの?顎関節症の患者様とも接する機会が多くなり、さらに色々な疑問が沸いてきました。またアメリカの結論も気になります。エビデンスエビデンスなんて言うけれど、顎関節症の治療にエビデンスなんてどこにもない!

ある時普通の歯科治療で顎関節症患者様をつくってしまいました。
左側6欠損で567のブリッジをセットした後に顎関節症を発症させたことがあります。打診がおこり抜随、その後根充をおこない、打診がなくなるもTEKを入れると打診が再現、顎も左に変移、、、左にクリックと痛みと不定愁訴が出現、完全に顎関節症にしてしまいました。スプリントや顎運動訓練、投薬など一時的には良くなるもののすべて無効でした。

どう考えても干渉は元の状態のほうがあります。そこでTEKにレジンを盛り干渉を再現させてみました。すると左で咬むことができずに右に変移させてはじめて咀嚼運動が可能になります。
すぐに、打診、不定愁訴が消失しましたが、すこしづつすこしづつ干渉をとりのぞいて全体で咬めるようにしていくと症状がでてしまいます、メタルの補綴物に交換し最終的にはほんの少し干渉をのこしました、ブリッジでは1点と右の歯列のほぼ全体で咬む状態です。3週ほどで干渉はなくなり全体で咬めるようになりました、クリックの消失、顎が右に変移していました。人為的に干渉をつくることによって干渉が消失していたのです。

この一つの症例で何がいえるということはありません。でも考えられるのは習慣性に左にあごが引かれているのを、補綴によって干渉がなくなったため、筋のバランスが良いところ(癖の方向)に顎が引かれてしまった。それまでとれていた調和が崩れてしまう可能性はあります。

筋と骨格が干渉のある状態でバランスをとっているとすれば、干渉を除去すれば筋の方向に顎はひかれてしまいます。

変移した状態でバイトをとり。補綴をすれば、ずれた状態でよけいに咬みこみさらに変移していきます。

もちろんすべての症例がこの状態に当てはまる訳ではありません。干渉の除去が顎関節運動の制限をとり、症状が無くなる可能性は充分あります。

あそびが無い状態でより咬合が顎に影響を与えるようになります。

下顎安静位では上下の歯は接触していません。咬合が顎関節に影響を与えるとしれば上下の歯が接触している必要があります。

上下の歯が接触しているのは緊張状態であり、上下の歯が常に接触するような緊張状態で初めて咬合と筋の状態が顎に影響を与えるのではないでしょうか?

重い頭を背骨と後頸部の筋のみで支えることはできません。咀嚼筋は大きなモーメントで頭を支えています。
歯牙接触位では頭をささえきれず、後頸部の筋がこります。

慢性的な筋緊張がおこりそれが眠っている間もつづき、疲労がたまります。仰向けで両手を開いて眠ることができません。これはサバイバルモードといって緊張状態での睡眠です。すぐに逃げることができるように母親が子供を守る体制で横を向いてまるくなって眠る状態です。

顎の筋の緊張が続くと全身の筋が緊張します。頭が支えきれないからです。

リンパ節の圧痛、慢性的な筋の凝り、頭痛肩こり首の凝り、慢性疲労、不定愁訴、、、、



それらの問題の多くが解決されているのですが。

まだまだ歯科界に広がることはありません。

当たり前の力学 それを追求していけば多くの問題が解決していく

事実 口腔の問題だけでなく 全身に応用がきいている

歯科も医科も含めて まだまだ おまじないのようなことをやり続けている。

医療はまだまが 魔術から始まったという歴史から抜けられない