Tさんはいつも言っていた。
「俺はカレーライスが大好きだ。カレーライスが一番いい。」
数年前まで私が勤務していたグループホームを利用されていたTさん。
その当時の私は、
「Tさんはカレーライスが好物なんだな。」
ぐらいにしか思っていなかった。
その後Tさんは亡くなり、最近になってTさんのご家族に職場近くのスーパーで偶然出会った。
「生前は父が本当にお世話になりました。」
Tさんのご家族が声をかけてくれた。
何気ないTさんとの思い出話をしていると、Tさんがカレーライスが大好きだったことを思いだし、そのことをご家族に伝えた。
「そうですか、父はそんなことを言ってたんですね。実は昔うちは貧乏で、私が小さいころ母はよく具の入っていないカレーライスを作ってくれていました。父はそれを見て『おっかあのカレーが一番美味い。お前たちは幸せだ。』と、いつも私たちに伝え、仕事に行くときには必ずご飯にそのカレーをかけ、それだけを持って行っていました。」
思わぬ昔話をご家族から聞くことができた。
ああ、Tさんはそれで「カレーライスが一番いい。」と笑顔でいつも話していたんだな。
そんな感慨深い気持ちが私の中で芽生えた。
今、私は夜勤のある施設で働いている。 夜勤は16時間拘束で弁当を2つ持っていくのだ。
当初、私は店でパンやカップ麺を買って夜勤に行っていた。
しかしそのことを妻に伝えると、しばらくしてから妻がこう私に話しかけてくるようになった。
「夜勤でしょ?カレー作っといたから。」
Tさんのご家族との話を思い出した。
「カレーライスが一番良い。」
年をとったら笑顔でそう言えるよう、私も今の仕事を頑張っていきたい。