中間管理職をしていると、悩まされるのが部下との関係性。特に海外駐在員の様に定期的に異動がある職員は業務に慣れたら異動となったり、部下への依存率は高まるので現地の直属部下(基本マネージャー)との関係が大変重要になってきます。

 

当然、彼らにとってみれば我々駐在員は数年でいなくなる上司なので、管理方法を大きく変更される、業務量を増やされる等の"

かき乱し行為"はあまりしてほしくないのが正直なところ。


駐在員によって考え方やマネージメント手法も違うので毎度やり方を大きく変えるのは大変だというのもあります。


当然、現地のやり方全てが正しいわけではないので改善すべき点があればそれを改善させるのが我々駐在員の仕事ですが、そこは会社のおかれている状況や今までの管理状況、人材のレベルや緊急性を加味しながらバランスを考えて行っていきます。

 

私自身、新天地に入ってまず注意するのは、現地直属部下との関係及び今行っている業務内容、管理方法をある程度理解する事。業務内容、流れをある程度理解するまでは気になる事があってもまず否定せずにしばらくは流す


どの様な管理を行っているか、報告、共有、分析、体系化の状況はどうか。各スタッフのレベルとローカルマネージャーの協力意思(本当の意味での)等を確認していきます。その中で経営層が要求するものと現状とギャップのある点は徐々に修正。


若干違和感がある、変な企業文化であるが、大勢に影響ないもの優先度の低いものは黙認するなど判断していきます。

 

ただし会社の方向性や利益に合わないものや、管理上良くない業務方法、習慣、コンプライアンス上問題がある事に関してはある点についてはローカルマネージャーと対立してでも改善していきます。


あまり関係性を重視するあまり、やるべき事も出来ない様では駐在者の意味がなくなってしまいます。必要であれば人事評価での意思表示、人の入替等で対応をしていく場合もあります。

 

実際に以前駐在した会社では現地ローカルマネージャーが勝手に退職金を積み立てており、経営層や前任出向社員が誰も知らなかったという事がありました。この財務マネージャーは20年以上のベテランで自分が着任した当初からなかなか情報を出してくれない。


“忙しいのでかまっている暇はない”、“業務の邪魔になる”等の強い剣幕で情報を囲うタイプのマネージャーでした。


継続年数が長期になればなるほど会社業務に精通しボス化、情報を自分で囲う事によって自分がいないと回らない状況をつくり“人事評価”をコントロールするという事はよくある話です。


ややこしいのがこういう長い経歴のマネージャーは業務面では精通しているため経営層(往々にして日本人)から絶大な信頼を得ていたりするので、総経理等の経営層が現地マネージャー側の肩を持つ様な事があると改善自体が一層難しくなります。


例えば上記の場合、即刻解雇が妥当ですが、問題を起こしたくない経営層が同意しない様な場合もあったりします(経営者といっても本社から送られたサラリーマンなので問題を表面化させたくないタイプの人もいます)。


その場合は本社に相談するか、それでも改善がない場合は帰任を申請すべきです。


上記のマネージャーの場合も当初本人(現地マネージャー)から直接総経理に直属上司である私が業務を邪魔している等のクレームが入りましたが、幸い退職金積み立ての証拠を提出できたので、総経理が彼女の肩を持つことはありませんでした。

 

いずれにせよ会社である以上、上司と部下は決して“友達”ではなくマネージする側とされる側。お互いのリスペクトは必要ですが、足元を見てくる社員には毅然とした態度で上司の人事権を行使する事必要です。


そこを放置してしまうと、その後の業務が大変やりづらくなりますし、ストレスもたまります。周りの社員もあなたがどの様な対応するかを見ますので、毅然とした意思表示は必須です。 


しっかり意見を伝え、本質的に(表面的でないか)協力するかしないかをしっかり見極めるべきです。協力する意向が見られない場合はしっかり評価を下げる


それでも改善が見込めない場合は人を入れ替える等の措置が必要です。


人の入替による業務の混乱等一時的な負担はありますが、長期的な視点で見た場合、取るべきリスクです。

 

私の現在駐在している中国は労働法が厳しく、労働者保護の要素が強い法律形態となっています。双方が合意しない場合の解雇は最大滞在年数×2倍の補償金支払いが必要となります。


また地域によって法律解釈も違うため、場所によっては2倍の補償金を払っても不当解雇とみなされ、雇用継続を求められるケースもあります。

 

ローカルスタッフは上記の法律も当然熟知しておりますので、経験年数が長いスタッフは補償金目当てで、適当な態度で業務にあたり解雇されるのを待つ、というケースもあり得るわけです。


企業側としては当然勤務怠慢に対する適切解雇としたいところですが、実際には勤務怠慢を立証する必要があり、証拠集めなどしっかりとした根拠を集めるのが困難なケースがほとんどかと思います。


明らかに業務拒否、暴言などの過失がある場合は証拠も集められるのですが、ほとんどの場合は勤務年数×1~2倍の経済補償金を支払い辞めてもらうという形になります。


ですので20年選手は最大20か月×2倍=40か月分という莫大な補償金を支払う事になりますが、長期的な視点ではやむを得ない措置です。

 

上記の様な損失を避けるためには常に管理レベルを上げる様にしておく。


優秀な人材や問題のある社員をしっかり評価する人事制度、会社規定の整備、本社から等の定期的な外部監査(内部統制)、日本人出向者同士のコミュニケーション・協力体制を整える。


問題のある社員は長期間放置しない外部からの人材登用を進める、配置換え等常に管理レベルを常にアップデートしておく事が必要です。以下、海外での人材管理上留意すべき内容を簡単にまとめましたのでご参考ください。

 

①引継ぎをしっかり行ってもらう。

 特に海外現地法人の業務引継ぎの場合は数か月引継ぎし、部門内外の業務の流れ、部下とのやりとりをしっかり理解しましょう。 


前任者からも各担当者の評価や業務の留意点等いろいろな話が聞けるので引継ぎは大変重要です。


特に問題のある社員がいる場合は前任者の評価、対処していない背景などしっかり把握しておく事が大事です。引継ぎの無い着任はいつもしんどいです。

 

②直属部下、その他部門スタッフと関係性を作り、業務を理解する。

 着任始めは結果を残したいと躍起になりがちですが、まずは直属の部下や他部門としっかりコミュニケーションをとり信頼関係、協力関係を築くように努めることが重要です。


関係を悪化させる事自体がモンスター社員を生む原因になる事もあります。スタッフに多大な負荷のかからない形で業務の流れを理解する事に努めましょう(時間に余裕がない場合は別ですが)。


その上で優先順位の高い内容については徐々に深堀していき理解をする事が重要。

 

③まずは業務理解、ただしモンスター部下がいる場合は早めに対応

業務理解するにも最初から情報が出てこない(情報囲いタイプ)。


直属部下が駐在員を元々よく思っていない(非協力的)、感情的・情緒が不安定、威圧的など、信頼関係が築けないタイプである場合は改善が見込めるかどうか、人の入替が必要かなど早めの判断が必要。


なるべく避けたい手段ですが、人の入替等が必要である場合は早めの対応が必要。現地の労働法、人材マーケット事情、給与水準を早めに確認し、後任者を探す事が必要です。

 

④会社の管理レベルを上げる様努める。

上でも述べましたが業務貢献、協力度、能力をしっかり給与に反映できる人事評価制度の導入規定整備、権限確認(承認フロー)、内部監査の利用管理面の向上が大変重要です。


管理レベルが低いと利益構造が生まれる、権限が集中する等社員がモンスター化する土台が作られやすくなりますので、常に管理レベルを向上する様模索する事が重要です。システム化の積極導入も推奨されます。

 

⑤早めに帰任・異動する。転職する。

上司や本社の理解がない、管理が放置され続けており体質的・構造的に業務改善できるレベルでない・コンプライアンス上高いリスクがあるがそれを改善する見込みがない様な場合は早めにその場から離れる手段を考えるべきです。


業務が進まないだけではなく精神的ストレスで健康を損ねますし、自分が問題のつけを払わされる可能性すらあります。


特に海外駐在員は言語面、文化、生活習慣面での違いからストレスがかかりやすい状況に置かれています。


健康が何より第一ですので、上記の様な健康を損ねる状況がある場合は早めにその場を離れる手段を取る事が大事です。

 

以上、問題のある社員がいる場合の対処法について私見を述べさせていただきました。

ぜひ参考にしてみてください。今日も健康で楽しい海外生活を送りましょう!