「・・・・・。」
ご家族、遺族とおもわれる方達が、救急外来処置室に5人。
(救急搬送で・・・。)
不自然だったのは、全員が礼服であったこと。
(急なことやったのに、正装して・・・?)
もっと、驚いたのは、救急外来処置室で、横たわるご本人の枕もとにも
式服が置かれていたことだった。
(これは・・・。)
よく見ると、全員 白ネクタイである。・・・結婚式?!
<あのー・・、ご搬送は、ご自宅に向かわせて頂いてよろしいでしょうか。>
「はい、お願いします。」
<では、ご住所を・・。>
「出かけるところやったんです。
ほんとに元気やったのに。
なんでまた、今日なんや、ですわ。」
<・・倒れられたのですか? びっくりなさったでしょう。>
「さあ、行くでー、って声をかけても、なかなか出てこないので、
様子を見に行ったら、洗面所で倒れてて、
あわてて救急車を呼びました。
父はまだ、55歳ですし、まさか、こんな急に・・。」
<お出かけというのは・・。>
「結婚式。
今日は、妹の結婚式やったんです。
父にとっては、大事な一人娘の結婚式ですわ。
なんということですかね。」
<・・・・・。>
「ほんとに楽しみにしてました。
家族みんなで喜んで・・。
それが、一瞬で変わることになるなんて誰が想像したやろか・・。」
<お母様とお嬢様は、大丈夫ですか、大丈夫なはずはありませんでしょうが。>
「・・もちろん、放心状態です。
皆、もう式場に行ってました。
電話で、どう言おうかと、言葉がみつからなくて・・。」
<お察しいたします。いずれにしてもとりあえず、お家に帰りましょうね。>
「そうですね。
葬儀屋さん、結婚式は、どうなるんですかね。」
<・・・・。>
(・・・喪があけるまでは、無理でしょうね。)

✿ 他人事。
「お父さん、早よ、用意せんとあかんよー。
お友達のお葬式に行くんでしょ。」
「今、やってるがな。
香典袋、出しといてー。」
「はい、はい。」
「よっしゃ。これで、ええな、
行ってくるわ。」
「ちょ、ちょっと待って。
それは、あかんやろ。
ネクタイが白やんか。」
「あ、しもたー。
今日は、夕方から、ほら、商店街の会長の
娘さんの披露宴やねん。
葬式が先で、披露宴が後やったな。」
「もう、お父さん、えらいことやで間違ったら。
頼むよー。」
「ほんま、忙しいわ。」
