しかし、ネーハイシーザーが生まれた時期は、ちょうど馬産界に変革の波が押し寄せ始めた時期と一致していた。バブル景気に支えら
れて馬を作れば売れていた古き良き時代は過ぎ去りつつある。これからは本当に走りそうな馬だけを作らなければ、中途半端な馬では馬主にも調教師にも振り向
いてもらえない。馬作りを変えられない中小牧場は、やがて潰れていくしかない・・・。そんな時代の到来を、大道牧場の人々は、敏感に感じ取っていた。
当時の馬産地には、ヨーロッパからトニービン、アメリカからブライアンズタイムやサンデーサイレンスといった後の大種牡馬たちが鳴り物入りで輸入されつ
つあった。これからも今までと同じような馬産を続けていくだけでは、いずれ時代に取り残されてしまう・・・。
馬産の基盤は、繁殖牝馬にある。繁殖牝馬を古い血統のまま温存してしまったのでは、これから始まるであろう血統革命には、とてもついていけない。時代を
敏感にとらえた大道牧場が最初に取り組んだのは繁殖牝馬の入れ替えであり、ネーハイテスコも、ネーハイシーザーを産んだ後に他の牧場へと売却されてしまっ
た。ネーハイテスコの血統自身は悪いものではなかったが、自らは未勝利のうえ、子供がまったく走らないのでは、ある程度のところで見切りをつけなければき
りがない。こうしてネーハイシーザーは、牧場で去りゆく母の背中を見送る羽目になったのである。