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「生きものの記録」は黒澤が「七人の侍」の後に作った作品だ。

核恐怖症をテーマにした社会的力作ながら成功作とはいえない残念な映画になってしまった。「七人の侍」の後ということもあり、興行的にも娯楽作を望んだ観客からは嫌厭されヒットしなかった作品だ。

その一番の原因は黒澤の真面目さが裏目に出てしまった事だろう。

シナリオには黒澤も加わっているのに、どうも演出法を間違えているようにしか思えない。

三船のキャラクターは傲慢で核を極端に恐れている老人で、極端な発想をして観る側に不快さを感じさせる。それが狙いなのかもしれないが、そんな嫌な老人をシリアスに描いてしまうと観客の視点が定まらず嫌な映画にしかならない。

むしろこの映画はブラックコメディーにするべき作品だったと思う。

後年シドニー・ルメットの「ネットワーク」というTV業界の裏側を描いた作品を観た時も同じ印象を受けたことがある。シナリオはかなりカリカチュアされた内容なのに演出も出演者の演技もシリアスなので、何かちぐはぐ感が観ている間中つきまとった映画だった。

 

「生きものの記録」もシナリオ自体が極端な設定と内容なので、あっさりとブラックコメディーにしたなら、かなりインパクトのある傑作になったのではあるまいか。

主人公の老人をビートたけしに置き換えて考えてみれば、かなりトンデモない作品だと解って来る。

核を扱ったブラックコメディーというと「博士の異常な愛情」があるが、それよりも10年近く先取りした作品になったに違いない。

とはいえ被爆国日本が核コメディーを創るというのは問題視する方々が出てきそうである。かなり早く作りすぎた映画だったのかもしれない。

黒澤作品のリメイク作はいくつかあるが、名作をリメイクしてもオリジナル以上の作品が出来る訳はない。リメイクするのであるなら、むしろこういう映画こそ解釈を変えて作ってみるほうが傑作になる可能性があるのではあるまいか。