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手塚治虫が自分のアニメ等以外のLPレコードのジャケットを描くのは珍しいことだ。

自作アニメーションの音楽を担当してもらった付き合いからか、火の鳥というつながりからか冨田勲のシンセサイザーアルバム「火の鳥」はそんな手塚の珍しい書下ろしジャケットだった。

 

その冨田勲の新人作曲家時代にある日NHKから依頼があった。「今日の料理」という番組を作るので、明日までにテーマ音楽を作ってほしいというものだった。無茶な話である。 

選り好みの許されない立場でもあり、仕方ないのでスタジオに向かい、その場にいたマリンバはじめ数人の奏者を想定し曲を作った、というよりでっち上げたようなものだろう。アルフェーンの曲をいじった様なものだったからだ。

冨田としてはそんな依頼をしてくるから、その日限りくらいのヤッツケ番組みたいなものかと思っていた。ところがその後数十年にわたって続く番組になり、後になってもっとしっかり作っておくんだったと語っていた。

とはいえ現在では料理番組を代表するような曲になっているのは確かだ。

 

同じようなエピソードで、アラム・ハチャトリアンは1942年にガイーヌというバレエ音楽を作曲したが、発表会前日にもう一曲作ってくれと依頼され、一晩で仕上げたのが「剣の舞」で、それが皮肉にも彼のもっとも有名な曲となった。

 

対称的なのは、19世紀の作曲家ヨハネス・ブラームスが交響曲の作曲を始めたのは22歳の頃だった。マジメ人間の彼はベートーヴェンに匹敵するような作品でなければ作る意味がないという信念から推敲を重ね、結局完成まで21年かかってしまった。

結果はベートーヴェンの9曲に続く傑作と言われ第10番と評されるほどの完成度だった。

コンサートの定番プログラムなのは言うまでもない。

 

曲の長さは冨田が1分ほどハチャトリアンは2分ほどブラームスが40分以上であり依頼の有無の違いもあるが、対照的な作曲時間である。