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サスペンスを日本語に訳すと宙ぶらりんとか不安感ということになるらしい。しかし、あえて訳すならハラハラドキドキとしてみたい。

サスペンス映画の巨匠というと未だにアルフレッド・ヒッチコックの名が浮かぶ。

サスペンス映画を作る監督は他にも多数いるものの、生涯50本以上の映画を撮り、そのほとんどがサスペンス映画というのはヒッチコック以外にはいないからだ。

しかしサスペンス映画を撮りながら、意外にも犯人を推理する類の映画はあまりない。

事件の中心となるもの、ヒッチコック曰く『マクガフィン』をめぐって主人公たちが翻弄される姿を描いてサスペンス効果を高めるというのが目的だからだろう。

文字通り宙ぶらりんシーンのあるサスペンスの傑作というと「裏窓」「めまい」「北北西に進路をとれ」等を挙げることができる。ハラハラドキドキの合間のユーモアも絶妙だ。

 

ヒッチコックのユーモア感覚も独特で、サスペンス映画を作り続けたというのも、どこか人を驚かせたりハラハラドキドキさせて楽しむという、人の悪い彼のユーモア感覚ともいえるだろう。

フォードが俳優の演技注文を嫌がったのは以前書いた。同様にヒッチコックもイングリッド・バーグマンが自分の演技に満足できずに撮影を繰り返そうとするのに対して「なぁバーグマン、たかが映画じゃないか」

「救命艇」の撮影中、主役のタルラ・バンクヘッドが下着をつけていないことに気づいたスタッフがヒッチコックに注意を促すと「それは誰が注意すべきだろうか、衣装係か小道具係かヘアメイクか」

生前のインタビューで「あなたは俳優は家畜だと言ったそうですね」と問われ「そんなことは言ってない。家畜同様に扱えと言っただけだ」

いかにもイギリス流のブラックジョークというべきか。

 

ところでそのサスペンスの語源はサスペンダーだという。ズボン吊りが切れるかもしれないというのは確かにハラハラドキドキではある。