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20世紀初頭、黎明期ともいうべき映画というジャンルでは、撮影に関してあらゆるテクニックは全て暗中模索状態であり、制作中に発見した方法が後の撮影技術のスタンダードとなっていった。

 

それは演技自体も同様で、当時人気の二大スター、チャップリンとキートンもパントマイム芸を元にそれぞれのスタイルをフィルムに定着させていった。しかし自分の作品(というか金)に対して執着を持ったチャップリンに対して、芸道一筋のようなキートンは、江戸っ子気質というか稼いだ金は使い放題という感覚もあったのだろう、自らの作品を大事にするわけでもなく、パントマイム芸人キートンはトーキーとともに気づいたら時流に置いて行かれ忘れられたスターの一人となってしまっていた。その時代のドタバタぶりは「雨に唄えば」にも描かれている。

とはいえ現在、キートンは喜劇王として正当な歴史的評価がなされている。

そんな対照的な二人の生きざまは他にいくらでも散見できる。

 

リチャード・フライシャーという映画監督がいた。

有名な作品は「海底二万哩」「バイキング」「ミクロの決死圏」「トラ!トラ!トラ!」といった感じで娯楽映画をそつなくこなす職人監督といってもいいが、問題作「絞殺魔」なんて作品も残している。

そのフライシャーの「海底二万哩」は勿論ジュール・ヴェルヌ原作の古典SFを映画化した作品で、ディズニー初期の実写映画だった。

面白いというか皮肉というか、フライシャーの父親はマックス・フライシャーで「ポパイ」や「ペッティ・ブープ」といったアニメーションシリーズを作って、いわばディズニーのライバルだった。

映画史においてディズニーの名は燦然と輝いているが、フライシャーのポパイやベティはいまや一般には忘れかけられているに等しい。

いろいろなジャンルで優れた者が現れると同様な才能を持った人がしばし出現するもので、大抵はお互い切磋琢磨して能力を磨き上げ、より高い成果を成し遂げたりする。

ミケランジェロとダヴィンチ、ヴァーグナーとヴェルディ先に書いたキートンとチャップリンそしてヴェルヌとウェルズ。ディズニーとフライシャーもそういった良きライバルだったのかもしれない。

 

そんな父親のライバル会社でリチャードが監督した「海底二万哩」は、ジェームス・メイスンとカーク・ダグラスという当時としては珍しいスターの登場するSF映画だった。

当時はSF作品にスターが出演することはあり得ない時代だったからだ。

とはいえ古典と考えてもいい作品ではあっただろうし、既にディズニーブランドは映画界において別格的に確立されていた訳でもあり、出演に違和感はなかったのだろう。更にメイスンはヴェルヌの「地底探検」にも出演している。

 

映画はほぼ原作に忠実であるものの、やはり長編小説故かなりアレンジされてダイジェスト的になり、原作では謎の艦長だったネモの素性が明かされる描写もあった。

特筆すべきは潜水艦ノーチラス号のデザインで、竜の落とし子をモデルにしているというがレトロフューチャーというかアールヌーヴォー的な装飾デザインで、19世紀的な造形は見ていて楽しく味のある潜水艦になっている。

 

昔プラモデルで作ったこともあったが、捨ててしまい今でも残しておけば良い装飾オブジェになったと残念に思う。