ビリー・ワイルダーが登場すると触れたい作品が多数出てくる。
ワイルダーのモンロー作品には「お熱いのがお好き」もあり、この作品は喜劇映画のベストを選ぶとき常に上位を占めている。
AFIのアメリカコメディ映画ベストでは、一位が「お熱いのがお好き」そして二位に「トッツィー」と女装物が並んでいたこともある。別に女装すればウケるという訳でもないのだろうが。
悪名高い聖バレンタインデーの虐殺を彷彿させる事件現場に居合わせた失業楽士二人が、女装して女性楽団に紛れ込んで逃げるといった、シリアスからコメディへと路線を切り替えたワイルダーの、スラップスティック系の絶頂と言える作品に仕上がった一作。
その楽団にいるのがモンローという塩梅。
ワイルダーとしてはモンローのワガママに振り回されてしまうのにウンザリしていたようなのだが、二度も出演作を作ったという事は、モンローのコメディエンヌとしての才能は評価していたのだろう。更に三本目の企画も考えていたという事である。
モンローの他にトニー・カーティスとジャック・レモンという絶妙のキャスティングながら、それまでレモンはあまり大きな役を演じてはいなかったので、会社はフランク・シナトラを希望し、シナトラも興味を示したらしいが、打ち合わせに来なかったということのようだ。
結果としては最適の配役に落ち着いたといえるだろう。シナトラの女装というのは考えるだけでもおぞましい。
レモンもこの作品をもってスターの仲間入りとなった訳で、ワイルダー作品にはこの後「アパートの鍵貸します」「あなただけ今晩は」と主演作が続いた。
脇を固めるキャスティングも絶妙で、女装した二人を追うギャングのボスをジョージ・ラフトという、かつてのギャングスターに、そしてレモンに恋する大富豪に老コメディアンのジョー・E・ブラウンが扮し、ラストの爆笑をさらっている。そのラストの一言はアメリカ映画史上の名セリフのひとつになっているという。
ワイルダーのスラップスティックのセンスを堪能するには最適な一本というよう。

