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ワイルダーは俳優の使い方も絶妙でスラップスティック系はマリリン・モンロー。ソフィスティケーテッド系はオードリー・ヘプバーンと使い分けていた。

前にも書いたように「七年目の浮気」の前作が「麗しのサブリナ」で、モンローと対照的なスリム体型のオードリーのソフィスティケーテッドコメディで、オードリーの演技パターンを開花させたといえよう。

「麗しのサブリナ」は富豪に仕える運転手の田舎っぽい娘サブリナが、パリで洗練された娘になって帰ってくることから起こるロマンティックコメディなのだが、この、いわばサナギが蝶に変身するパターンが、その後のオードリー作品の主要パターンになった。

「パリの恋人」「マイ・フェア・レディ」がまさにそのもので、ワイルダーの「昼下がりの情事」では蝶のふりをするサナギ「ティファニーで朝食を」は蝶がもともとサナギだったという、それらの設定もその変形。そういえば「ローマの休日」も変形パターンとこじつけられるかもしれない。

日本ではオードリーの初期映画というと「ローマの休日」がやたら取り上げられる風潮がある。

かなり後年、共演のグレゴリー・ペックが来日したとき、記者からの質問が「ローマの休日」のことばかりなので、「日本では私の映画はローマの休日しか公開されていないのだろうか」とボヤイタという。

 

ワイルダーはオードリーの二作の共演者としてケイリー・グラントを希望していたのだが、どちらもスケジュール的に、或いは年を取りすぎているという理由で断ってきたのを残念がっていたという。

結果として「麗しのサブリナ」にはハンフリー・ボガート「昼下がりの情事」にはゲィリー・クーパーとどちらもグラントより年寄りが配役された。

ワイルダーは自作の演者としてグラントを理想の俳優と思っていた様だが、ついにそれが実現することは無かった。

とはいえプライベートではワイルダーとグラントの親交はあったようで、あるときワイルダーがグラント夫妻を招いて談笑を始めたとき、ステレオのスイッチを入れて音楽をかけると、グラントが「このステレオはいくらしたんだ?」と問いかけてきたので、値段を言うとグラントは奥さんに向かって「おい、私たちは騙されたんだ」と言い放った。

グラントのステレオはもっと高かったようで、それから会話の間ずっとステレオをにらんでいたという。

 

グラントは当時アメリカ映画界きっての富豪となっていたのだが、かなりセコい人だったようで、そのエピソードとしては、撮影所から一流ホテルの部屋を取ってもらうと、ホテル代を受け取り部屋はキャンセルして、もっと安いホテルに移ったり、家にあるウイスキーの瓶にはどこまで飲んだのかマジックで印がつけられていたということだ。

ハンサムな人気俳優ながら、ドケチが玉にキズというところか。

そのグラントが演じた「ヒズ・ガール・フライデー」の原作戯曲「フロント・ページ」をワイルダーは晩年に映画化して、久々のワイルダータッチが楽しめる映画ではあった。