声優の話というと、独特のキャスティングをするNHKの吹き替えは賛否の分かれるところだろう。
トニー・カーティスが主演するテレビシリーズ「マッコイと野郎ども」の声を、フィックスの広川太一郎ではなく山城新伍にして、吹き替えファンの顰蹙を買ったりしている。
しかし民放ではまずやらないであろうキャスティングが、思わぬ功を奏した例として「刑事コロンボ」シリーズの小池朝雄が挙げられる。
コロンボ役のピーター・フォークが、日本ではあまり馴染みのある俳優ではなかったため、小池の独特な発声と言い回しが大いに受けて、ドラマ自体の面白さも当然ながら人気シリーズとなった。
そのコロンボのエピソードでも上位の人気作に「別れのワイン」がある。
酒造メーカーでありワイン愛好家でもある男が犯人で、思わず犯した殺人を隠蔽しようと画策し、それにコロンボが独特の執念で食い下がる。
そのエピソードの中で、ワインオークションの場面があり、犯人のワイン愛好家がどうしても欲しいワインを前に、「人生は短いんだ、悲しいまでに短い」と呟きながら高価なワインを落札するシーンがある。
同行した秘書からワインの価値を尋ねられると、「5千ドルのワインなんて本当に必要とする人間なんていない、でも私は他の人に渡したくないんだ」とコレクター気質を吐露する。
ワインに限らず唯一のもの稀有なものへの所有欲は、当然ながら執着心が高ければそれだけ激しくなる。コレクターやオタクの共通心理を明確に言い表した言葉だろう。
何故人は物を集めたがるのだろうか?本や音と映像の媒体などは所有してしまうと、その安心感からか読んだり或いは再生することはあまりなく、死蔵に近い状態にする人も多い。
記録媒体はその体現や再現に時間を要するものが大半であり、緊急を要しない場合は先送りにしてしまいかねない。
読まない観ないは時間の問題だ、としても仮に余暇ができたからといって、読んだり鑑賞するとは限らない。結局、持っていることで満足し、それが快感といえなくもないのだろう。
以前も書いたが時間がないからといって、映画を早送りで観るなどという暴挙は慎むべきだろう。
などと他人事の如く書いてはいるが、ここまで自分のことを書いているのに他ならない。相変わらずDVDをまた数枚手に入れてしまい、さてそれら愛しきDVDたちはいつ再生されるのやら。
とはいえワイン収集であれば、飲むという至福のひと時はいかようにも作れようが、エピソードの犯人は、収集したワインが皮肉な結果を迎えることになる。
ワイン収集家を「大脱走」や「ミクロの決死圏」のドナルド・プレザンス。彼を結果として諦念に導く事になってしまう秘書役を「エデンの東」のジュリー・ハリス。
なにやら老人ドラマの様相ではある。一方ワインはそろそろ新酒ボジョレー・ヌーヴォーの時期がやってくる。
