何か質問は?
レナード・バーンスタイン作曲のオペラ或いはミュージカル「キャンディード」ラストの一言だ。
奇想天外紆余曲折の展開の挙句、主人公キャンディードと恋人クリゴンデがラストに合唱と共に歌うアリアの後に出てくる。そのアリア「草木を育てよう」の詩の内容は、僕らは賢くも純粋でもないから出来ることをするだけだ。
当たり前のようなことだ。それに対して家庭教師のパングロス博士が放つ締めの一言。誰も質問や否定は出来まい。
ところが出来ることをしようとしない人はいるものだ。
それはともかく原作はヴォルテール。この原作はいろいろな作品に影響を与えている。
芥川龍之介の蜘蛛の糸の主人公カンダタはキャンディードのもじりである。官能小説「キャンディ」は原作そのものをパロディとしている。
似たような話はゲーテのファウストやイプセンのペールギュントもあるのだが、この二作が主人公の放蕩話のようなものであるのに対してキャンディードはあくまでも運命に翻弄される純真な主人公なのだ。
その原作を題材にリリアン・ヘルマンがシナリオ化しバーンスタインが曲を付けた。その時代はマッカーシー旋風が吹き荒れた直後で、理不尽に人生を狂わされた人々の苦難を彷彿とさせる。
初演が不入りだった「キャンディード」はバーンスタインにとって長らく靴に入った小石という表現で気になっていて、晩年にやっと改訂版を完成させ演奏会形式で上演できた。その楽しい映像が残っている。
バーンスタインというと大ヒット作「ウエストサイド物語」のみが注目されがちで、皮肉にも彼自身はそれが悩みの種だったようだ。
原作パロディの「キャンディ」は驚くほど豪華な配役で映画化された怪作だった。
また原作を映画化したヤコペッティの作品は、残酷シリーズの流れなのかよく分からないが、日本では「大残酷」などと悲惨な題名で公開された。
どうも上演や映画化は内容の如くに苦難の道をたどるようだ。

