一頃は日本でも人気のジャンルだった西部劇だが近年はほとんど目にすることはなくなった。
原因はインディアンに象徴される異民族を悪役にした単純な話づくりが出来なくなり、勧善懲悪のアメリカンヒーローのウソに飽きて、それらによりヒーローを厚顔無恥に演じ切る役者がいなくなったこと。マカロニウエスタンに荒らされた時代も大きな要素だろう。
象徴的なアメリカンヒーローだったジョン・ウエインの死後、西部劇を撮り続けたクリント・イーストウッドもマカロニウエスタンでブレイクした俳優であり、その姿勢はダーティーヒーローそのものだった。
そのターニングポイントとなった映画の一本として「シェーン」を挙げることができる。
ジャック・シェーファーの原作小説を映画化したジョージ・スティーブンス唯一の純粋西部劇であり、美しく撮影されたホームドラマにも似た映画だが、主人公たちの物語の背景となる状況自体は実際に起きたジョンソン群事件をモデルにシンプルにまとめたものといわれている。しかし当時は同様な事件がいくつも起きたであろうと推察できる。
農民生活を描いた映画全体の雰囲気とは異質な感じもする格闘シーンや銃声の大きさ、殺し屋による農民射殺シーンの陰惨さ、といった類型的描写を排したリアリズム的描写が従来の西部劇とは一線を画している。
それらが監督の意図に反する方向であろうが、その後のいくつかの映画に影響を与え、やがてはマカロニウエスタンの種火ともなってしまった。
イーストウッドのいくつかの作品では「シェーン」へのオマージュを見つけることができ「ペイルライダー」はまさに「シェーン」の枠組みをそっくりなぞった様な作品だった。
とはいえ「シェーン」ではハリウッド王道の監督ジョージ・スティーブンスは悪を倒し去っていくストイックなヒーローの姿を描く「節度」をわきまえていた。
その「節度」が取り払われた時が西部劇の終焉だったのだろう。
モデルとなったジョンソン群事件自体は後に超大作「天国の門」として映画化されたが、それこそ映画会社ユナイトの終焉を招く結果となった。
