本当にいい刀は鞘に入ってる。おいお前たちもおとなしく鞘に入ってろよ。
映画の流れを変えた凄まじい決闘の後、ラストシーンで椿三十郎が若侍たちに言って去っていく。
破天荒で型破りの人間は組織の中では生きてゆけない。逆に組織人間やマイホーム型はおとなしく鞘に収まるしかない。現在にも通じる言葉だろう。
お家騒動を血気盛んな若侍たちが大騒ぎにしてしまい、偶然居合わせた椿三十郎が力技で解決する。しかし実は家老がひっそりと平和的に解決するつもりでいたことが最後のほうで分かるのだった。
黒澤明中期の傑作だ。黒澤映画は大きく3期に分けられその2期は傑作が目白押しだ。
その2期とは三船敏郎とのコンビ時代とピタリと重なる。不器用な役者である三船自身も代表作と言えるのは黒澤とのコンビ作品ばかりであった。
三船のいなくなった黒澤後期はトラブル続きで、急速にパワーダウンしてしまう。
ハリウッドへの進出失敗とりわけ「トラ・トラ・トラ」解任と「どですかでん」不発そして「影武者」勝新太郎降坂騒動が三大トラブルといえるだろう。
日本映画のベストワンにしばし登場する「七人の侍」が満身の力を込めた油絵の超大作だとすると「椿三十郎」は名人がさらりと描いた水彩画の傑作のように思える。アクションとユーモアの呼吸その名人芸がなんとも心地よい。
近年、森田芳光によるリメイク作が公開されたが日本映画はなんであんな馬鹿なことをするのだろう。
オリジナルを知っている者には若造たちの「椿三十郎」ごっこにしか見えなかった。
もっともそんなものを観るほうがいけないといわれたらそれまでではある。そりゃそうだ。
