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奇跡のりんご


「何をやっても駄目なんです。最後リンゴは


実らなくてもいい、ただ絶対に枯れてくれるなと


お願いして、リンゴ畑の中を頭を下げて回りました」


それを見ていた隣の農家は、


とうとう発狂したと思ったらしい。


そして、とうとう実家からも絶縁された。


「上の娘が学校で“お父さんの仕事”という題で


作文を書かされたことがあったんだ。


それには “お父さんの仕事はリンゴ作りです。


でも私はお父さんの作ったリンゴを一つも食べた


ことがありません” って書いてあるの。


ズシンと来ましたね」


6年目。木村さんはついに自殺を覚悟して


夜の岩木山に分け入った。


首が吊れるような手ごろな枝ぶりを探して岩木山の


奥へ奥へと分け入ったのさ。


お月さんがきれいだった。


その時さ、ふっと周りを見たら


見事なリンゴの木がいっぱいあるのさ。


そこに座り込んで、何気なく土のにおいをかいでみたの。


そしたら、うちの畑とまったくにおいが違うのさ。


生きている土というか、自然そのものの


においっていうのかな。農薬をまいているわけでも


ないのに虫があまりいないし、


肥料をやっているわけでもないのに


雑草も生き生きしているしね。


土だ、土だと気が付いたの」


その瞬間、木村さんは自殺することを忘れてしまった。


無農薬の リンゴ栽培は土が命 であることに


気が付いた瞬間だった。


山を駆け下りた木村さんは、自分の畑の土の


においをかいだ。山のそれと全然違う。


これだったんだ。これまで、リンゴを実らせようとして、


上ばかり見ていた。下を見ることを忘れていた。



無農薬のリンゴ栽培の“開眼”だった。



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なおも、木村さんの「無農薬のりんごを作る」という夢は続きます。



熊本県産のお米「森のくまさん・零」も本当の美味しさと


安全性の追求のため、農薬、化学肥料を一切使っていません。


DAZLEEでりんごは扱っていないのですが、


「農作物を無農薬で作るということがいかに難しいか。」


それと 安全で良質なものを作る という、


農家の、表には出てこない


大きく切実な思いを感じ取ってくれたら嬉しいです。






奇跡のりんご 



それからの5年間、むなしく時間が過ぎた。


リンゴの花は咲いてくれなかった。


経済的にも窮地に陥ったが、精神的にも追い込まれた。


葉は出てくるが、花は咲かなかった。虫と病気だけは発生した。


隣の農家に迷惑を掛けないよう、虫取りは毎日やった。



無農薬でリンゴを栽培するということは、前人未踏の冒険だった。


この冒険は本人だけではなく、周辺の農家をも


戦々恐々とさせることになった。


農薬散布をしないために害虫が大量に発生して、


周辺のリンゴ園にも被害をもたらす心配があったからだ。


「農薬を使ってけろ」と、何度も怒鳴り込まれた。


親戚からは集中砲火を浴びた。


誰も口をきいてくれなくなった。


「おはようございます」とあいさつをしても、皆ぷいっと横を向いてしまう。


近所の人に会いたくないから、どこよりも早く起きて、


リンゴ畑に逃げるように入った。




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木村さんの「一切農薬を使わないりんごを作る」という夢は


当時、 絶対不可能 と言われていました。


29歳。地獄の日々のはじまりでした。


本来農作物には虫が付きます。


建物の中でなく、自然の中、土のもとで作るのですから


当然です。



熊本の米農家である「森のくまさん・零」の


生産者も、農薬を使わない製法で作られていますが、


虫を殺すほどの殺傷能力をもつ農薬を使わないのは


確かに、身体面、精神面への安心は特筆すべきものが


あります。


しかし、その分何倍も手間暇がかかるとおっしゃいます。


まして、デリケートで虫を嫌うリンゴを


無農薬でつくるというのは


まさに絶望的な挑戦だったのです。




木村さん 「春が過ぎたら害虫が大量に発生したんです。


顔面蒼白になりました。取っても取っても取りきれない。


樹1本に買い物袋いっぱいの虫が取れた。


周りの農家の迷惑を考えると、


虫取りは決して手を抜けないんだ。


毎日毎日、虫取りだった。


そこにものすごい数のハチが集まってきて、


さまざまなハチの巣が樹にぶら下がって、


まるで芸術作品みたいになったなあ。


 そして、7月になると葉が黄色になり、


パラパラと散り始め、8月の初めには一枚残らず散ってしまったんだ。


リンゴはバラ科の植物だから、葉がでんぷんをつくるんです、


葉っぱが命なんだ、その葉っぱが散ってしまったんだ…」



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