黒豆を煮ています。黒豆はゆっくりと柔らかくなっていきます。急には出来上がりません。だから時が止まったようにふつふつと煮立っている黒豆を眺めているのですが、心が暇になるのか、自然と今年一年のことが思い返されてくるのでした。

 

過去を振り返るとかなしいことばかりが思い起こされそうだと危ぶむ私です。けれど心に起こったとは案外とそうでもなく、幸せな思い出ばかりが巡ってきます。どうやら今の私は思っているよりも幸せな生活を送っているようすです。

 

黒豆を買って電車に揺られ帰ってくる最中、車窓から流れる景色をみていたら、私が生きているのは死ねないから以外に理由など無いと考え込んでしまったのを思い返していました。流れる景色は飛ぶようです。ひとつひとつを見つめることなど出来ません。それが、ただ生きているとだけ思っているときと似ているのだと思い当たりました。

 

私は生きている最中に起こるいろいろな場面で立ち止まり、その中にある幸せを拾って生き延びていたことに気付いたのです。つらいことはなるべく見ないようにして自分を守っています。事実がどうだったかというのは考えなくとも良いというのはこの人生の中で得た心得であるようすです。

 

黒豆が煮上がるまであと何時間もあります。黒豆と共に私は今年を振り返って思い出を作っていきたいと思います。