春の海でした。気温はあたたかで海風が吹いていました。波に足を浸すとひんやりと冷たいのでした。砂を踏みしめて、私はこの海のなかにいる貝を感じようとしていました。私は潮干狩りに来たのです。貝を獲らずに帰るわけには行きません。

 

県営の海水浴場なのでした。だからその海にいる貝は、播いた貝ではなく、天然の貝なのだそうです。外洋に面しているために、住まう貝は、ハマグリ、コタマガイ、ホッキガイで、アサリやマテガイは居ないのでした。持ち帰っても良いのは3㎝より大きいハマグリとコタマガイと、7㎝よりも大きなホッキガイで、定められた域内で採った貝をひとり1日1㎏までと決まっているのだそうです。

 

潮干狩りをして天然の貝を探り当てるのは難しいことのように理解しています。潮干狩りとは情緒を楽しむもので成果を得るためのものではないようにも思いますが、私はやる気でした。なぜならば過去に私はこの海でハマグリを採った経験があるのです。だから今年もきっと採れると強く信じ、朝6時に家を出て、車を走らせこの海水浴場までやってきたのです。

 

膝まで海につかり、足で砂を探って、私は貝を探そうとしていました。すると波がやってきて私にぶつかり更に流れていきます。水着の私はビショビショになりましたが自然と笑いが溢れてきました。なんと爽快なのでしょう。

 

足に何か当たりました。きっと貝に違いありません。波に流されないように注意しながらその何かを取り上げます。3センチは超えていそうなハマグリでした。春の海から授けられた、豊かな恵みのその貝です。

 

私は楽しくて仕方がありません。眩しい光の中で波はくりかえしやってきます。そのたびに波をかぶり声を上げて笑うのでした。