半パラレルになります。
本日も蓮さんsideです。
それではどうぞいってらっしゃいませ。
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ふと気がつけばあの子の事を考えている。辛い目にあっていないか、傷ついていないか、もしも彼女が泣いていたら…。もう二度と会えないと分かっているのに、彼女の事が頭から離れない。でも、もしも…もしももう一度逢えたら…?埒もない事を考えて頭を振った。
そんな彼女との、まさかの再会は思いのほか早かった。
大きな荷物を抱え息を切らせながら歩く彼女が心配で、あわせる顔もないというのに横から荷物を取り上げた。
「先日は初対面だというのに失礼いたしました。今日からお世話になる最上キョーコです。よろしくお願いします。」
俺との過去をすべて忘れたように、彼女はそんな風に礼儀正しく挨拶した。離れてしまった距離が寂しい。だがそれも仕方のない事だ。
椹さんとの会話で、先日社長から聞かされたばかりの、お遊び部門の被害者だと察した。自分の状況を全く理解していない彼女に、簡単に説明すると、やはり酷く困惑しているようだった。明らかにやる気のない彼女を、この業界に引きずり込むなんて、あの人は一体どういうつもりなのか。過保護すぎるあの人の事…なんとなく理由はわかる。俺の態度もおかしかった自覚はある。もうこれ以上傷つけたくないのに、どうして上手くいかないのだろう……。
「一体どういうおつもりですか。」
最高速で仕事を終わらせて社長室に押し掛けた。
「開口一番それか。お前が感情をあらわにするところを久しぶりに見たような気がするぞ。」
呆れて、そして感心したようににやにや笑う社長に苛立ちが募った。
「あの子にあんなふざけた部門を押し付けて一体どういうおつもりですか。貴方が脅したんじゃないんですか。」
「人聞きの悪いことを言ってくれるなよ。大体、先に芸能界に入りたいと言ったのは彼女の方だぞ?残念ながらオーディションには落ちてしまったが、切り捨てるには惜しい。だからチャンスをやったんじゃあないか。」
「彼女は、芸能界には興味がないと言っていたじゃないですか!?」
社長は、驚いたとでもいうように目を開いた。
「それは初めて聞いたな。彼女は何も言っていなかったぞ。お前は聞いたのか?でも、お前は何も話さなかったんだから俺が知らなくても仕方ないよなあ?」
「…っ。お願いですから彼女を解放してあげてください。あの子は口外するような子じゃありません。」
屁理屈を繰り返す社長に、直角に頭を下げた。勘の鋭いこの人は、全て知っていてこういう態度をとっているのだ。
「…無理だな。事情を知ってしまった以上放置は出来ん。それに、お前は最上君の何を知っている?彼女は相当強かだぞ。」
溜息をつきながら、紙束を放り投げられた。
「…これは?」
「彼女に関する報告書だ。簡単なものだがな。中学を卒業すると同時に上京。幼馴染と同居。最初のうちは昼間の仕事をしていたようだが、そのうち、夜の仕事をメインにバーと小料理屋で働いていたようだ。最近、同居を解消。幼馴染との手切れ金がアカトキから相当額支払われている。こっちで雇うのにアカトキにずいぶん支払わされた。」
「人違いじゃないんですか…。」
信じられない彼女の経歴。一体何があったんだろう。それに、添付されていたバーて働く女性の写真も別人のように違う。黒い艶やかな髪を後ろの高い位置で一つに纏め、銀フレームの眼鏡をかけ、艶やかに唇が濡れている。この間会った、化粧一つしていない、ブラウンの髪をした素朴な少女とはどう見ても同一人物とは思えない。
「…いや、それはない。その写真もすごい美女だろう?話じゃあ、バーの仕事はこっちに来る前からやっていたようだな。勤め始めた時から玄人同前だったそうだ。辞めさせるときに随分しぶられて骨だった。」
「…辞めさせたんですか。」
「当然だ。未成年がそんなところで働いていたら大問題だからな。」
疲れたように笑う社長は机に音を立てて手をついた。
「とにかくこれは決定事項だ。事情を知る彼女を放置するわけにはいかんし、何より彼女はこちら側の人間だ。…興味がある。」
社長が面倒くさい部門を立ち上げたのも最後の本音が原因だろう。
「本人は気付いていないようだが、彼女のひどい男性不信はお前も一枚かんでるんだろう?心配ならついていてやれ。」
などと、にやにやと笑いながら痛いところをつかれて、戦略的撤退ををする羽目になったのだった。社長は、俺と彼女を接触させて何がしたいのだろう?
過去は何一つ持ち込まない、そう決めたはずなのに…再び出会えた彼女に心が浮足立つ自分を否定できなかった…。
蓮さんの心理描写激むずっす。文の神様はどこ!?