ドキドキタイフーン 11
全国ネットの生放送で、恥ずかしいやり取りを放送されて、私たちはセットの陰で出番待ちしている。
「いやあ、天下の敦賀蓮を落とし穴に落とすのは無理だろうとは思ってたけど、最後の最後にあんな衝撃映像がくるとは思わなかったよ。」
番組のMCを務めるATSUSHIさんが、感想を述べている。私だって、こんな辱めに遭うなんて思ってなかったわよ。
「でも、肝心の仕掛け人の彼女の名前がピーって入っちゃったもんな。すげぇ気になならねえ?しかも、カメラマン、顔さりげなく映してくれねえし。スタッフは誰か知ってるのにずるくねぇ?えっ?事務所に確認中?流石にやばそうだからって?」
私は、名前も顔も出なかったことに心底ほっとした。敦賀さんが不満そうにちらりとこちらを見てきたけど、当事者じゃないからそんな顔ができるんです。これで、私だってことが世間にばれてしまったら明日から外を無事に歩けなくなるわ。ファンの方たちから、いったいどんな報復行為が待っているか、分かったもんじゃないんだから。
「ああ!そうだよねぇ。名前以外にもピーって入ってたもんね。あの敦賀蓮が、放送禁止用語!一体何言われてたんだろうねぇ?」
ちらりとこちらを窺いながらの言葉に、本当にいたたまれない。流石の敦賀さんもばつが悪そうだ。
「さて、テレビの前の皆さんはもしかしたらモザイク映像になっちゃうかもしれないけど!そろそろ、登場してもらいましょう!敦賀蓮さんと仕掛け人の彼女!登場しちゃってください!」
合図を送られて、私大きなため息をつくとテレビ用の笑顔を張り付けて、セットの中へとエスコートされたのだ。
「「こんばんは。」」
セットの中央に立つと、二人でATSUSHIさんに挨拶をした。
「こんばんは!二人とも結構平然としてるんだね?」
「役者ですから。実は結構いっぱいいっぱいなんですよ?」
敦賀さんが苦笑しながら答えた。お願いです。私に話は振らないでください。
「なるほど。彼女も役者さんなのかな?それにしても、美人さんなんだねえ。こりゃ、敦賀君も惚れるよね?」
「・・・・ええ。べた惚れですから。」
もう、穴があったら入りたい。渾身の営業スマイルも崩れてきそう。
「うわぁ。のろけに来たのかよ!敦賀君もしかして開き直ってる?」
「ははっ。ここまで来たら開き直るしかないでしょう?」
二人は、仲良く談笑を続ける。
「ねえ、ヒント!ヒントちょうだいよ。イニシャルとか、女優さんかどうかだけでも!」
私はぶるぶると首を振った。
「駄目です!敦賀さんのファンに殺されちゃいますぅ!ATSUSHIさん!私の事は触れないでくださいぃ!」
「くすくす。デビューしてたった2年で、バラエティもドラマも引っ張りだこの君が何言ってるの?」
「何、さらっとばらしちゃってるんですか!?偶然です!運がよかったんです!私なんかまだまだ敦賀さんの足元にも及びません!」
ATSUSHIさんは楽しそうに目を光らせた。
「へえ!そんなにいろいろ出てるんだ?もう絶対俺は、当ててみせるよ!っていうか、なんかこの話し方聞き覚えあるかも。俺、もしかして会ったことある?」
「・・・そうなの?」
二人に見られて固まった。・・・うぅ。墓穴掘ったかも。実は、タレントのお仕事で何度か共演させていただいたことがある。だけど、そんな事言えるわけないじゃない。
「えーっ?誰だろ?こんな美女一度会ったら忘れないと思うんだけど!事務所のOKがいるってことは、LMEの所属でしょ?マジわかんねぇ!っていうか、テレビ見てる人も気になるよね?今、モザイクかかってるんでしょ?まだ、OK出ないの?」
ATSUSHIさんが、再度スタッフに確認をしたところで、どこからか軽快な音楽が流れてきた。
・・・・・・・この音楽は!?
「私が許可しよう!!」
・・・・・やっぱり!バックダンサーズを引き連れた社長さんが登場したのだ。
ドッキリは、皆さんご存知のあの番組です。あれくらいしかまともにドッキリ番組見たことないんです。・・・・・あれを、敦賀氏に仕掛けようと思うこと自体があり得ないんですけど。フィクションなので!