夢から覚めたら 18 | カホルのブログ

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 夢から覚めたら 18






この国に来てからもう三か月になる。初めて感じる親の愛情に未だに戸惑う事の方が多い。先生から息子さんの話を伺った時、親ばかだと思ったが、先生だけじゃなくジュリエナさんも相当だった。

先生にいたっては、親ばかに更に過保護も加わって、こちらに来た当初は敷地内どころか、屋敷の中からさえも出してもらえなかった。先生曰く躓いて転んだらどうするんだという事らしい。お医者様に、適度な運動は必要ですと怒られて、しぶしぶ敷地内の散歩は認めてもらった。綺麗な花でいっぱいの庭園を散歩するのは私の日課になっている。必ず誰かが付いてくるけど。

安定期に入ってからは、家に一人で置いておくより安心だと言って、どちらかの仕事場についていくことも多い。一人といっても絶えず使用人が誰かいるのだけど。ただ置いて貰うのは心苦しくて、家事を手伝ってみたのだが、どうもそれが拙かったらしい。

こちらでの撮影はやっぱり日本とはスケールが違って、つい見入ってしまう。赤ちゃんのための繕い物を持っていったりもするのだけれど、つい手が止まってしまってほとんど進まない。

先生は、いつかお前もこの世界で演ればいいと、簡単に言ってくれるけど、日本でも駆け出しだった私には、夢の世界だ。

あの、妻馬鹿でもある先生が、ジュリエナさんの料理を止めたのにも驚いたけど。君の料理は神秘的で刺激的でとても素晴らしいんだが、妊婦には刺激が強すぎるんじゃないかとか何とか言って、必死に止めていた時には笑ってしまった。妥協案として、ジュリエナさんが料理する時には、私がサポートとして一緒に作るということで手を打った。彼女の、神秘的な料理を常人の料理に作り変えるのに、毎回試行錯誤を繰り返している。過保護な先生のおかげで、滅多にキッチンに立たせてもらえないので、大変だけど実は楽しみにもしている。

彼女の余命宣告も最初はすごく驚いたけど、最近は次はいつ出るのかとワクワクして待っている自分もいる。

そして、私の日課といえばもう一つ。



「また、ここにいたのか?」



先生に声をかけられて、手に持っていた写真たてを机の上に戻した。



「・・・先生。」


「また間違えてるぞ。」


「はい、お父さん。」



そう、三か月たってやっと彼をお父さんと呼ぶのにも慣れてきた。



「・・・本当にいいのか?彼に連絡しなくても。」



部屋を見渡しながら、先生…お父さんに確認されて、はいと頷いた。ここは、久遠さんがまだお父さんたちと一緒に暮らしていたころに使っていた部屋だ。部屋の気配が敦賀さんのマンションの部屋によく似ていて、つい、私はこの部屋の出入りを許可されたことをいいことに、入り浸ってしまっている。



「彼は、あちらでやらなければいけない事があるでしょう?それに、日本にいるころにあちらでは大事な人は作れないと言っていました。私が、その誓いを破らせてしまうわけにはいかないでしょう?」



もう、何度もされてきたやり取りを繰り返す。寂しくないと言えば嘘になる。でも、彼の夢の邪魔はしたくなかった。

そして何より、掴んだ手を再び放されるのが怖かった。



「・・・まあ、お前がいいならいいさ。こちらからは、一切連絡しないと決めたんだったな。」



あちらから、連絡がない限りこちらからは一切動かない。これは、私たち三人で決めた取り決めだった。私が、ここでお世話になっていることは、社長さんが知っている。今まで何もなかったのだ。これからも、きっとないだろうと私は思っている。



「何か用があったんじゃないんですか?」



私は、話を変えるように声をかけた。いつもはここにいる時は、用がある時にしか彼らは近づいて来ないでくれる。



「ああ、来週からホームステイを頼まれてな。部屋も余ってるし、構わないか?」


「ホームステイ?私は別に構いませんが。」



そもそも、私だって居候のようなものだ。そう言ったら怒られるだろうけども。



「ああ。なんでも、こっちで仕事を探してるらしい。宿を提供してくれと頼まれてな。

キョーコがいいなら、OKを出すぞ?」



私は、はいと頷いた。この不景気だし、少しでも費用を押さえたいのだろうし。困ったときはお互い様よね。



「さあ、そろそろジュリが帰ってくる。食事の支度を手伝ってくれるか?」



過保護なお父さんらしくない、珍しいお誘いに私は頷いて彼の後に続いて部屋を後にした。