韓国のご家庭では、本格的な冬に入る前の初冬の時期に、初物の野菜が出回る来年の春先まで食べるひと冬ぶんのキムチをまとめて漬け込む習慣があり、それを“キムジャン(김장)”と呼びます。キムジャンは、2013年にユネスコ世界無形文化遺産にも登録されている韓国の伝統的な文化のひとつです。
写真は、韓国料理の専門店「妻家房(さいかぼう)」高麗川(こまがわ)駅前店(埼玉県日高市)内にある“キムチ博物館”に展示されているキムジャンの様子です。
我が家は夫もわたしも辛いものが大好きで、もともとキムチは市販のものを買ってよく食べていたのですが、2年前の冬から、白菜が出回ると見よう見まねで自宅でも漬けるようになりました。一番最初は韓国語講座の先生に、手近にある材料で初心者でも作れるレシピを教えていただき初挑戦したところ、わたしたちの知っているキムチというより“キムチふう浅漬け”みたいな仕上がりになって、美味しいけれど何だかちょっと物足りないな～と思うような味でした。
家族総出、お隣さんもみんな一緒にこうして和気あいあいと漬けるキムジャン、楽しそうだなぁ～
最近は日本のスーパーマーケットの漬物売場にもふつうにキムチが並んでいるし、デパートや韓国料理の専門店などでも本格的なキムチが手軽に買えるので、わざわざじぶんで漬けることもないのですが、そういえばむかし実家では日々の糠漬けのほかに、白菜漬けや蕪(かぶ)の千枚漬け、たくあん、らっきょう、梅干しなどいつも何かしら漬けていて、それが季節の風物詩にもなっていたので、それを思い出して、我が家も“初冬＝キムジャン”にしてみようかな
なんて思っています。
まず最初の下準備は白菜の塩漬けです。規定量の粗塩で塩水をつくり、4つに裂いた白菜を漬け込んだら大きなビニール袋に入れ、きっちりと空気を抜き重石をして14～15時間置きます。その後流水にさらしながら薄い塩味が残るくらいまで塩を抜き、そこから3～5時間、絞らずにしっかりと水切りをします。
ところでひと冬の間食べられるだけのキムチを漬けるって実はとても大仕事で、だから韓国ではキムジャンは昔から一家総出で行う年中行事のようなものらしいのですが、とにかく量が多いので漬けるのも大変なら、美味しく食べ続けられるよう保管するのもまたひと苦労･･･かと思いきやさにあらず
。韓国にはちゃんと“キムチ冷蔵庫”という専用の保存用冷蔵庫があるんです
。キムチ専用のぴっちりとした密閉容器が付属しているので匂い移りの心配もないし、庫内はスイッチひとつでキムチの発酵、熟成に適した温度や湿度が自動的に保たれるようになっているんです。(いいなぁ～ほしいなぁ～)
なんといってもキムチの味の決め手はこの“ヤンニョム(양념)”という合わせ調味料です。ヤンニョムの土台になるのは“キムチのり”と唐辛子粉(고춧가루)で、そこに大根、人参、葱、韮(にら)、おろしニンニク、おろし生姜、アミの塩辛、すり胡麻、すり林檎などが入ります。入れる材料や量はその家ごとに違い、それが「我が家の味」になるのは韓国も日本も同じですね。
でもでもキムチ作り初心者の我が家にキムチ冷蔵庫があるはずもなく、材料の調達から漬け込みまで一度にたくさん漬けるのも難しいので、結局白菜一株を漬けては食べ、また漬けては食べるの繰り返しがやっと･･･。そうして幾度かチャレンジしているうちに少しずつ要領もよくなり、レシピも自分流にアレンジしたりできるようになります。ちょっと工夫して前回よりも美味しくなっていたときはほんとうに嬉しくて、誰彼かまわず差し上げてみたり(笑)。
一枚一枚白菜の葉を持ち上げながら満遍なくヤンニョムを塗っていきます。塗り終えたら内側のヤンニョムがこぼれないよう外側の葉をぐるりと巻きつけてひとかたまりにし、ビニールを敷いた漬物樽に隙間なく並べ置いて24時間常温で発酵させ、その後は小分けして冷蔵庫で保管します。
たった一株二株で“キムジャン“とはとても呼べないのですが、それでも自宅でキムチを漬け始めて三年目。今年も昨日、スーパーマーケットで見つけた新鮮で丸々とした白菜を二玉、二日がかりで漬け込んで今年のプチ・キムジャンをスタートしました。最初のころはレトルトの白がゆで代用していた“キムチのり”も煮干しとだし昆布でしっかり出汁をとって作れるようになり、キムチの命ともいえる“ヤンニョム（양념)”の仕込みにもずいぶんと慣れました。本漬けの過程はまだまだ試行錯誤しながらですが、韓国のオモニ(お母さん)やハルモ二(おばあさん)たちの手際のよさには遠く及ばずとも、ハートだけは寄り添ってこころを込めて作ります。
浅漬けですぐに食べるもよし、冷蔵庫に入れて3～5日目からが食べごろです
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yantaro