秋の天気は変わりやすいと言いますが、曇りくもりのち雨雨予報だったのがありがたいことに外れたようなので、秋田旅二日目の朝、急に思い立って田沢湖(秋田県仙北市)へ行ってみることにしました。

 

 地図を見ると田沢湖は周囲約20kmのほぼ円形の湖で、湖畔には田沢湖周回道路というドライブルートがあるようです。わたしたちは国道105号線方面から入ったので、まず田沢湖のシンボルともいえる“たつこ像”に会いに行きます。あたりを払うような黄金色のたつこ像、気品に満ちてとても美しいですキラキラ

 

 たつこ像の隣には、田沢湖に張り出すような形で鎮座する小さな神社があります。

 

 それが田沢湖畔の“浮木(うきき)神社”です。流れ着いた大きな流木(浮木)を祀ってあるのが名の由来で、“漢槎宮(かんさぐう)”とも呼ばれるそうです。

 

 参拝を終え御朱印を待つ間に、社殿のぐるりを回りながら景色を堪能音譜

 

 ちょうど遊覧船もやって来ました。

 

 田沢湖は深さがなんと423.4mもあり、日本一ビックリマークなのだそうです。そういえばむかし地理の授業で川の長さや流域面積、山の高さなどとともに湖の深さのランキングで覚えた記憶があります。写真ではうまく撮れませんが、水際から湖の中央に向かって少しずつ水の色が変化していくのも神秘的に感じられます。

 

 紅葉の中に佇むたつこ像。

 

 浮木神社の御朱印です。

 

 たつこ像から周回道路を15分くらい走ると、

 

 湖に向いて建つ大きな朱塗りの両部(りょうぶ)鳥居が見えてきます。水際近くに建っているのでときに湖水に洗われるのか、湖側の柱は少し色が抜けていますが、広島の厳島(いつくしま)神社にも匹敵するほどの堂々たる両部鳥居です。

 

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 鳥居をくぐり周回道路を渡ると“御座石(ござのいし)神社”へ上る石段が現れます。もとは田沢湖の主である龍神を祀る神社として“龍神社”と呼ばれていたそうですが、1650(慶安3)年、出羽国秋田藩第2代藩主、佐竹義隆公が田沢湖を訪れたとき、腰をかけて休まれたと伝わる平らな石があるところから、後年になって御座石神社と社名が変わったそうです。

 

 石段脇の見上げるばかりの大木は御神木の杉の木で、樹齢約450年だそうです。

 

 手水舎。

 

 御座石神社の御祭神は事代主神(ことしろぬしのかみ)、綿津見神(わたつみのかみ)、龍子姫神(たつこひめのかみ)の三神で、事代主神と綿津見神は海の神さまであり、龍子姫神は金色の“たつこ像”にもなっている辰子姫を神格化したものだそうです。

 

 田沢湖にはこの辰子姫にまつわる伝説がありました。そのお話しはこうです。むかしむかし、神代村に辰子という稀に見る美しい村娘が住んでいました。あるとき水に映る自分の姿を見て自身の美しさに気づいた辰子は、いつまでも若く美しくありたいと切望するようになり、永遠の美しさを手に入れようと近くの大蔵観音に百夜の願掛けをします。

 

 百日目の満願の夜、観音さまが現れて「それほどまでに願うなら、山の北に湧く泉の水を飲むがよい」というお告げを授けます。辰子はその泉を見つけ出しお告げのとおりに水を飲みますが、不思議なことに飲めば飲むほど喉が渇き、ついには腹ばいになり水面に口をつけて、ごくごくと水を飲み続けたそうです。するといつの間にか辰子の姿は大きな龍と化し、己の身に起きた報いを悟った辰子は田沢湖に身を沈め、湖の主となったのだそうです。なるほどそれで、社殿の横のたつこ姫像は下半身が龍の姿をしているのですね。

 

 御座石神社の御朱印も何種類かあったのですが、龍神になった辰子姫に思いを馳せてこちらの御朱印をお受けしました。きっと今でも深い深い田沢湖のどこかに、永遠の美を手に入れた辰子姫がいるかもしれない・・・と思いながら。

 

 神社の裏手の山には辰子姫が化粧をするときに使ったといわれる“鏡石”があるそうですが、この日はそこまでの道が通行止めになっていて見に行くことができませんでした。

 

 湖畔に下りてみると、

 

 湖水の透明度の高さがよくわかります。

 

 湖畔にはところどころに辰子姫を偲ぶ像が点在しています。こちらは1940(昭和15)年、玉川の強酸性水を田沢湖に導入したとき多くの魚が死滅したそうで、その魚たちと辰子姫の慰霊のために建てられた“姫観音像”だそうです。

 

 “蓬莱(ほうらい)の松”と名づけられたアカマツの巨木。中国の伝説によると、仙人が住むという蓬莱山の松の木は枝ぶりがよいことで有名で、それに似ているところから蓬莱の松と呼ぶようになったそうですが、残念ながら枝が折れてしまい、今は少しいびつな形をしています。推定樹齢は300年だそうです。

 

 4つ目の“辰子観音像”。このふくよかで女性らしい辰子像は1968(昭和43)年、明治百年記念として建立されたそうです。

 

 田沢湖周回道路を走っていたら、途中のドライブインの看板に「秋田犬見学所」の文字を見つけて急停車ビックリマーク。ここはレストラン兼土産物店の『田沢湖共栄パレス』さんで、観光バスの停まる店の裏手の一画で飼い犬の秋田犬2頭を見学させてくださいます。お店を利用すれば無料、見学だけなら協力金おとな100円です。上の写真はおっとりとした天空(そら)くん。

 

 そして一回り小さいほうは天空(そら)くんのお母さんの由美ちゃん。二匹ともひとによく馴れていて、カメラを向けるとちゃんと目線をあわせてくれますラブラブ

 

 秋田犬のハウスの横には立派な鶏舎もあり、比内鶏など秋田の地鶏が飼育されています。写真を撮ってみたのですが写っているのは金網ばかりであせる、かろうじて見れるのは上の2枚だけでした・・・。

 

 敷地のなかには小さなお社もあり、“辰子姫明神”の幟(のぼり)が立っています。 

 

 その横には巨大な龍の彫像が展示してあるのですが、由緒書きがなく由来はわかりませんでした。水を司る龍神と辰子姫の“辰”を“龍”にかけてあるのかなぁはてなマーク

 

 片隅に、“奈々の墓”“ハチの墓”“ゴンの墓”とお墓が三つ並んでいました。きっと天空(そら)くん、由美ちゃんの先代わんこたちですね。 

 

 ひとも羨むほどの美貌を持って生まれるだけでもじゅうぶん幸せなはずなのに、自身の美しさを自覚することで、今度はその美貌を永遠に保たねばならないという呪縛に憑りつかれるなんて、あまりにも哀しすぎる気がします。美しさにはまったく縁のないわたしは想像するしかないのですが、美人には美人なりの苦労や葛藤があるのだなぁということだけはよくわかります。美人薄命はやはり真理なのかもしれません。

 

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