8月16日付の記事『筋を通す』を書きながら、ふと思うことがありました。それは今よりむかしの方が一本筋の通ったひとが多かった気がする、ということです。わたし自身も含め現代人の傾向として、事なかれ主義というか他者との間になるべく波風を立てず穏便に済ませよう、じぶんの意見を主張するより周囲の様子をまず見るなど、大勢(たいせい)に迎合しやすい風潮があるように思います。

 

近所で見つけたお花。クロッカスかなはてなマーク

 

 それ自体は決して悪いことではないし、人間関係を円滑にするのには大切なことなのですが、生来のわがまま体質が未だ治らないわたしとしては、ときに息苦しく感じることもあります。うんうんと物わかりよくうなづきながらも内心はちょっと違うんじゃないはてなマークと思い、それを言おうか言うまいか迷って結局言わない(言えない)ことが多いです。口にして場の雰囲気を壊すのも申し訳ないし、皆を納得させられるほどの話術もなし、それなら中途半端に口を挟まない方がいいと思うのですが、黙っているのは同調している証と思われるのもちょっと居心地が悪かったりして、なかなか難しいところです。

 

鈴生り~音譜

 

 それはさておき、どうしてむかしの方が今より筋の通ったひとが多かったと思うのかわたしなりに考えてみて、思い至ったのは、唐突ですが“働き方の違い”です。今は会社などの組織に属して働くいわゆるサラリーマンがほとんどですが、むかしはサラリーマン(以前は“月給取り”と呼んでいました)よりも肉屋、魚屋、豆腐屋などの小売業や、漁師、大工、左官、鳶(とび)の職人など自営業のひとたちが断然多かったです。わたしの母方の祖父も材木商を営んでいましたが、自営業はサラリーマンのように黙っていても会社から給料が出るわけではないので、自身の腕一本で稼ぎ、己の才覚ひとつで世間の荒波を乗り越えながら家族を養い、暮らしていかなければなりません。

 

先日の昭和記念公園のハーブガーデンで見つけたのですが、何というお花でしょうはてなマークわたしは初めて見ましたが、紫色の太陽みたいな珍しい花ですね。

 

 つまりそこには、たとえ貧しくとも誰の世話にもならず、己の足で立って生きているという自負と誇りがあるので、必要以上に他人に迎合することもなく、自身の信念に基づき「嫌なものは嫌」とはっきり意思表示をし、筋を通して生きられる土壌があったのではないかと思うのです。サラリーマンに自負や誇りがないというわけではありませんが、組織に属していればどうしても自分の利益や思いだけを貫くのは難しく、忖度(そんたく)やときには意に添わぬ譲歩も必要で、筋を通したくとも通せないことが多いものです。そこがサラリーマンが圧倒的多数を占める今と、むかしの違いではないかと思います。

 

これも同じく昭和記念公園で出会ったお花です。

 

 渡辺信一郎著『江戸の生業(なりわい)事典』(東京堂出版)によると、江戸時代の庶民の職種はなんと500種を超えるというのですからびっくりです目。専門職の職人のほか、物売りや大道芸人、なかには蛇使いや馬糞(ばふん)掻きなんていう仕事もあったそうで、江戸庶民の逞しさにはほんとに脱帽です。商売に浮き沈みはつきものですが、お天道(てんとう)さまに顔向けできぬこと以外は何でもして生きてやるというその気概は、一国一城の主だからこそ持てるものなのかもしれません。

 

涼しくなったら、少し夏バテはてなマークしていたマリーゴールドが復活ビックリマークまた元気に咲いています。

 

 江戸のむかしはほとんどのひとが何かしら手に職をつけ、自立して筋を通しながら生きていたものが、いつからか・・・たぶん明治大正の頃でしょうか・・・会社勤めのサラリーマンが増え、そのあたりから自己主張して叩かれるより、目立たずおとなしく無難に過ごすほうが身のためと思うようになっていった気がします。もちろんそれが悪いというのではありません。誰しも家族を養い、食べていかなければなりませんから。

 

日日草の咲き残りなのですが、10月中旬を過ぎてもまだポツポツとかわいい花をつけてくれるので無下にするのも忍びなく、咲き終わるまで楽しませてもらおうと思っていますラブラブ

 

 時代が変わればひとびとの考え方や生き方が変わってゆくのも当然のこと。江戸のむかしに戻りたいわけではないのですが、それでも手に職があるというのは、生きていく上では何よりの強みかもしれないと思います。「てやんでぃビックリマークべらぼうめビックリマーク」「こちとら江戸っ子だいビックリマーク」と威勢よく啖呵(たんか)が切れるのも、こっちがだめならあっちがあるさという一種の開き直りの現れで、その潔さがいっそうらやましくもなるのです。実際は胸の内で叫ぶだけですけどね~(笑)。いつの世も見過ぎ世過ぎに苦労はつきものですが、己に対する筋だけは通したい、と思いはやはりそこに至ります。

 そして“生業(なりわい)”って味のあるいいことばですね。意味は同じでも、“仕事”や“ビジネス”よりいかにも地に足がついている感じがしてわたしは好きです照れ乙女のトキメキ

 

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