トム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル』シリーズ、待望の第7作目“デッドレコニング PART ONE”が2023年7月21日に全国公開され、2日目に見に行きました。
写真は『ミッション・インポッシブル デッドレコニング PART ONE』の公式サイトよりお借りしました。
タイトルにもPART ONEとあるように本作はシリーズ史上初の前後編2部作で、今回公開されたのはその前編なのですが、見終わって早くもつづきが気になるおもしろさ。PART TWOの公開が待ち遠しくてたまりません。
ところでサブタイトルの“デッドレコニング(dead reckoning)”ってどういう意味か気になって調べてみると、「船舶や車両など移動体の現在位置を推定する技術のことで、“推測航法”とも呼ばれる」ものだそうです。またreckoningは“計算”や“報い・罰”という意味らしく、直訳すると“死の報い”となるのですが、映画を見たあとに改めてサブタイトルを見ると、その両方の意味が込められているように感じます。
さて最初の舞台はロシアの次世代潜水艦「セヴァストポリ号」で、それは決して敵のソナーに探知されることなく航行できるという最新型。そのため相手はAI(人工知能)を用いた“推測航法(デッドレコニング)”によりその位置を推し測るしかなく、ある意味最強の潜水艦なのですが、そのセヴァストポリ号が海中で実験航行しているところからストーリーが始まります。セヴァストポリ号は高度なAIを搭載していて、あるときそのAIが暴走し、レーダー上に実際には存在しない幻の敵潜水艦を映し出し、魚雷攻撃を仕掛けてきます。セヴァストポリ号が緊急反撃に出たところで、その敵潜水艦も魚雷もレーダーから忽然と姿を消すのですが、あろうことかその直後にセヴァストポリ号から敵潜水艦に向かって発射したはずの魚雷が自らの艦を直撃し、最強のセヴァストポリ号はあえなく沈没、乗組員は全員死亡するという悲劇に見舞われます。
一方オランダのアムステルダムでは、CIA(アメリカ中央情報局)の極秘諜報部隊IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)に所属するエージェント、トム・クルーズ扮するイーサン・ハントが新たな任務を告げられています。その内容は、前々作『ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション』、そして前作『ミッション・インポッシブル フォールアウト』にも登場しているイルサ(レベッカ・ファーガソン)が持っているキー(鍵)を手に入れるというもの。そのキーは2つのキーを組み合わせて完成するという特殊なもので、イルサが持っているのはそのうちの一つ。それを手に入れた上でもう一つのキーも探し出さなければなりません。凄腕のイーサン・ハントに白羽の矢が立つほどのミッションですから、単なるキー探しではないのはもちろんです。
その特殊なキーを手に入れようと狙っているのはどうやらアメリカ政府だけではないようで、そこには“エンティティ”というコンピューターウイルスが関係していて、冒頭の潜水艦セヴァストポリ号の沈没もその仕業ではないかと思われます。エンティティの暴走と二つのキーの謎、そして残るもう一つのキーを求めて、イーサンはIMFの仲間であるベンジー(サイモン・ペッグ)とルーサー(ヴィング・レイムス)2人の協力を得て動きはじめます。キーの奪還のみならず、その2つを組み合わせた特殊なキーがいったい何なのかも当然探らなければならないので、もう1本のキーを持っていると思われる“バイヤー”なる人物を突き止めて、2本のキーが揃ったところでキーの謎を究明し、奪還しようと画策するのですが、当然計画どおりにすすむわけもなく、いったい誰が敵なのか味方なのか、何が真実で何が嘘なのか、ハイスピードのストーリー展開に一瞬たりともスクリーンから目を離すことができないのです。
謎のキーを求めてアラブ首長国連邦の砂漠、イタリアのローマ、ヴェニス、そしてオリエント急行列車など舞台を次々に変えながら、行く先々で予期せぬ危機に見舞われるイーサン・ハント。予告編にも出てくる派手なカーチェイス、バイクもろとも崖から飛び降りたり、暴走するオリエント急行列車の上での死闘、爆破された橋から転落寸前の列車内での救出劇などなど、とことん実写にこだわるトム・クルーズの熱演はもはや手に汗握るどころの騒ぎではなく、何度もうダメだ・・・と思わされたことか。次第に明かされてゆくIMFのエージェントになる前のイーサン・ハントの過去、そこに深くかかわっているらしいガブリエル(イーサイ・モラレス)と、最後の最後にふたたび登場するパリス(ポム・クレメンティエフ)という謎の女の正体、そしてエンティティの最終目的とは何なのか・・・気になることだらけなのですが、今回のヒロイン、グレース(ヘイリー・アトウェル)がIMFのメンバーとなることを申し出るところでPART ONEは幕を下ろします。
本作『ミッション・インポッシブル デッドレコニングPART ONE』のプロモーションのために来日予定だったトム・クルーズが直前にキャンセルせざるを得なくなったのが、ハリウッドの脚本家や俳優たちでつくる労組“全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)”が起こしたストライキのせいでしたが、その要求のひとつが「AI(人工知能)の利用制限」だったそうです。本作の重要なキーワードもAIだと思うと、63年ぶりという大規模ストライキの真っ只中に映画が公開されたことにも何か運命的なものを感じます。そしてやはりトム・クルーズは、きっとどんなにAIが発達しても、それを寄せつけないほどの迫力と存在感で見るものを圧倒してくれると信じているし、そういう意味で彼は唯一無二の存在であることを再認識させられるのです。
入場者プレゼントでいただいたポストカード。
シリーズ最長の163分(2時間43分)という上映時間をまったく感じさせないスリルとスピードにあふれた『ミッション・インポッシブル デッドレコニング PART ONE』、間違いなくこの夏必見の映画のひとつだと思います。
yantaro